2025.06.02
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匸P　　コーヒーブレイク　

　　　　　対馬の海に沈む

　　　　　　　　窪田新之介 著　　　　　集英社　　　2024.12.10
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　全編を通じて感じる違和感は、島民がともかく筆者の取材に応じてくれることで
あった。筆者は、JAグループの日本農業新聞に入社し、国内外で農政や農業生産の
現場を取材してきたJAの身内であった。だから農家の人々は、やっかいな事件の
取材に応じてくれたのだ。しかし都会に住む私達は、JA全中(JA中央会ともいう)の
存在を、知識として知っていても、日頃接することがないのでほとんど知らない。
　ところが、5Kgで4000円を越す銘柄米の高値で、一気に世間の話題の中心が、JAと
お米になった。その対策として農水省は、3、4月に備蓄米を放出したが、その90%を
落札したJA中央会は、備蓄米を速やかに市中に流す努力をしなかった。その要因を
流通問題にすり替えた江藤農相は、自分はお米を買ったことがないと失言し失脚した。
　後任の小泉農相は5月末の販売開始を実現し、JAの怠慢ぶりを国民に見せてくれた。
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　筆者は1978年福岡生まれ、2012年に日本農業新聞を退社し、今はフリーで仕事を
している。1996年にJA対馬に入社し、2019年に事故死した西山義治と同年代だ。
　本書を読み始めたときの違和感は、あまりに旧態依然とした時代感覚のズレだった。
　西山義治という、ひとりの共済営業マンが、20年近く、LA(営業)として好成績を
あげ、全国表彰を12回も受けているのに、JA幹部はその不自然さに気付こうとしない。
　断トツの成績は不正の産物で、22億円の損失をJA対馬に与えていた。
　そんなことが、彼の死後に判明したと誰もがいうのだが、あまりにも白々しい。
　身元保証人の両親は、毎月4万円の賠償をJAに求められ、今も返済している。
　だが、周りの役職者はすべて無罪で、西山ひとりの仕業と決めつけられている。
　筆者の取材に応じ、すでに幕引きが図られたこの不正の構造を教えてくれたのは、
本書上梓の直前にガンで亡くなった、元上対馬支店長の二宮厚實(あつみ)氏であった。
　対馬は長崎県に属する。日本の主な島では、沖縄と北方4島を除けば、第3位になる。
　佐渡845k㎡、奄美大島712k㎡、対馬696k㎡、淡路島590k㎡、天草下島574k㎡、
屋久島505k㎡、･･･壱岐134k㎡の順で、壱岐は平坦で農地も多い。
　対馬は、その名の通り対の島で、南北ふたつに分かれている。広さのイメージは、
淡路島より少し大きいくらいだ。だから農地もそこそこありそうに思ってしまうが、
全島が嶮しい山岳で、耕作適地は1.5%しかない。
　西山は、農協のライフアドバイザー(LA:営業)をしていて、全国に2万人もいるLAの
営業成績で、日本一の称号を獲得していた。しかし勤務地は島の北端にある。上対馬
支店近辺の町人は3000人程度しかいない。それなのに総合優績表彰を12回も受賞した。
　総合優績表彰は、共済事業、信用事業、経済事業の三分野で、いづれも優秀成績を
あげた人に贈られる、夏の甲子園の優勝旗のようなものだ。実際に「LAの甲子園」と
仲間内で呼ばれている。ここで何度も断トツの営業成績をあげ、しかも共済だけで
なく全分野で総合優績を上げていたのだから、裏で、何か大規模な不正を日常的に
行っているに違いないと気付かない方が不自然だ。
　何百人もの営業マンと幹部が、東京の有名ホテルに集まり、有名女優らも参加する
晴れ舞台で、毎回彼に直接表彰を手渡していたJA共済連の会長が、全く気づけない
はずはなく、言い訳の範囲を越えている。不正による成績とは知りませんでしたと
誰もが言うが、飲酒運転の同乗者が良くする言い訳と、同じことではないか。
　南北の島は、中央の万関瀬戸橋でつながっている。その南に対馬やまねこ空港、
さらに10kmほど南、島の中心に厳原町がある。ここに西山が住んでいた家があり、
対馬唯一の飲み屋街もある。西山は千両という料亭を、仲間と良く利用していた。
　週のあいだは、上対馬町比田勝にあるJA支店のそばで寝泊まりし、共済事業の
営業(実は机上の虚偽申告作り)をしていて、週末に帰宅がてら、この千両で飲み会を
する生活を繰り返していた。そしてしばしば、長崎市の繁華街銅座にも行っていた。
　2019年2月25日の朝、西山義治が海に転落死したのは、万関瀬戸橋から北に15kmほど
離れた峰町の櫛港であった。島のやや西を通る国道3８2号沿いではなく、東海岸の町で、
彼が20年近く勤務した、上対馬町比田勝へのルートからは外れている。
　対馬市の人口は2024年末で27,097人。内訳は、厳原町9,806人、美津島町6,706人、
豊玉町2,922人、峰町838人、上県町1,313人、上対馬町3,269人となっている。
　2021年、長崎県の人口は1,350,000人。長崎市416,000人、佐世保市249,000人、
島原市45,000人、諫早市136,000人、大村市96,000人、平戸市30,000人、松浦市
24,000人、対馬市30,000人、壱岐市26,000人、五島市36,000人、西海市27,000人、
雲仙市43,000人、南島原市45,000人で、対馬は、長崎県でも過疎の地だ。
　JA対馬の組合員数は、個人、法人・団体を合わせて3718人(2018年3月現在)だった。
　だが、西山が死ぬ前までに獲得した契約者は、2281世帯、4047人に及んでいる。
　組合員数を越える契約者数で、対馬全島の人口の1割以上に相当する。
　もし西山の手口が、後述するJA兵庫西のような、契約者に損をさせる手法で
あれば、上対馬町の人々に不満がたまり、早晩発覚していたはずだ。ところが
筆者のいう顧客が得をする「前期の手口」を使っていたため、誰れもが黙認していた。
　彼は実にこまめに、契約者の声を拾い、過大な被害申告をして儲けさせていた。
　儲かったお金で、高い物品を購入してもらうから、経済事業の成績もあがった。
　手口といっても、高等なものではない。共済で契約されている建物が台風で被害を
うけたことにして、例えば数件の被害を100件くらいと偽って長崎の本部に申告し、
10万円の保証を、50万円にするといった脚色をしていた。証明に必要な被害状況の
写真は、別の現場も含め3万9000枚ほどストックしていて、それらを使い回していた。
　上司や他部門の承認といった職務分離は全く機能しておらず、すべて西山軍団が、
休日出勤しながらこなしていた。同じ職場で、共済事業、信用事業、経済事業を
おこなう職員が、数人で同居して仕事をしていた。顧客も得をしているのだから、
発覚する可能性はなかった。共済保障申告は、台風の季節が過ぎてから、こなした。
　信用事業の責任者であった女性職員(実は西山の子分）は、自分の承認印を西山に
預けていた。信用事業(金融)のパソコンは、職員カードを差し込んだままオープンに
してあり、ほかの職員も、自由に使うことができた。暗証番号も共有していた。
　西山は、顧客の通帳と印鑑を預かる借用口座と、顧客に無断でその名義を使って
開設した借名口座をいくつも持っていた。
　契約者への郵送通知は、すべて支店宛てに設定してあった。　
　支店長承認印を無断で使用し、契約書を偽造し、複数のマネーロンダリング口座を
通して、顧客と仲間に振る舞う資金を捻出していた。
　彼はある時期から、共済受取金の最終着地点を自分にする、｢後期の手口｣に
移行した。そうなると、仲間の取り分は減っていく。飲み会に誘われる回数も減る。
共犯者たちのなかで西山への不満が増えるが、周りの同僚も共犯者ばかりだから、
うかつな会話はできない。西山が手際よくなだめていれば、発覚の恐れは少なかった。
　しかし、2012年に赴任した小宮厚實支店長だけは、彼にくみせず、不正が我が身を
ほろぼすことを諭したという。西山とその仲間たちは、小宮支店長をつるしあげた。
　こうして小宮は上対馬支店から左遷されてしまった。
　支店長は追い出したが、2014年ころ信用事業の女性職員も退職した。
　2016年、本店共済部にいた豊田脩二が西山を告発した。しかしこのとき、上層部は
すべての告発を握りつぶした。2018年6月まで組合長をしていた桐谷もグルであった。
　桐谷が2009年に組合長になれたのも西山のお陰であった。桐谷は組合長に就任後、
厳原支店に転勤したばかりの西山を、3カ月で、もとの上対馬支店にもどした。
　不正な成果で、桐谷組合長、幹部たちは、海外旅行、国内旅行をプレゼントされた。
　信用事業の女性職員が退職後、中枢業務を引き継いだのは古株の同僚女性職員で
あった。彼女はノルマを嫌い、ずっと非正規で通していた。西山のグループにも
加担しない道を選んだ。ブスだのデブだのと西山に罵られたが、我慢した。西山に
よって退職に追い込まれる前、彼女は、引き継ぎ後の早い段階で、彼の不正操作に
気づた。西山軍団の危険な誘いに乗らなかったのはそのためだ。
　西山はついに彼女を退職に追い込んだが、送別会を行うことには、強く反対した。
　しかし送別会は西山抜きでひそかに開かれた。この宴席で、これまでグルだった
仲間に大きな穴が開いた。いつも飲み食いに連れて行ってくれた西山が、このところ
誘ってくれなくなったとか、私腹を肥やしているとか、仲間うちの愚痴が噴出した。
　西山は、ひとりでお金を手に入れる「後期の手口」に移行していたから、仲間うちに
鬱積する不満を聞く機会を失っていた。それまでのように、水増し共済受取金を顧客に
渡す労力も省いていたので、顧客の不満もくすぶり始めていた。西山は、自分の口座に
お金を振り込み、大口資金を手に入れた。そのお金で不動産を購入し、賃貸住宅を
建て、JAから足を洗い、家賃収入で暮らしていく後半生を計画していたようだ。

　農協では今もノルマ営業を続けている。組織に食いつくダニのような上層部の
体質は、まるで変わっていない。2008年、会社法改正で始まった内部統制は周回遅れ、
内部通報は2周遅れ、ガバナンス･コードに至っては、かすりもしない。
　同じ日本に会社法が適用されない治外法権の会社が、同居しているようだ。
　JAは、治外法権のムラ社会を形成して生きてきた。仮にこのムラ社会をJA国、
都会をJB国と略称にしてみると、JA国こそ本来のA級国家であり、戦後GHQにムラの
魂を抜き取られたJB国は、B級国家と見ているようにさえ感じられる。
　閉ざされたムラは衰退を続け、JA全中はずっと以前に存在意義を失っている。
　かつては1万もあった単位農協は、いまでは506単協に減少してしまった。
　JA対馬の共済で22億円の損害が生じても、都会人にはなんの損失も生じない。
　従って都会国民には痛くも痒くもないのだが、JAの異常さが、今回の米高騰で
ようやく明るみに出た。JAとしては前代未聞の大騒ぎであった。
　JA全中の異常と、流通の複雑さにも目が向いた。5次卸まである流通経路の複雑さは、
今のご時世に継続していることが不思議なくらい非効率だ。
　私は、池袋サンシャイン60にあった社団法人日本農村情報システム協会を訪問した
ことかある。ここの副会長にお会いしないと何事も進まないとのことであった。
　サンシャイン60の同じフロアに、似たような名前の別会社があり，そこに主な
IT企業のSEが出向していた。この法人は、農村の要望を受け、農村型CATV構築の
お手伝い(補助金割り当て)を一手に仕切っていた。対象選定基準は不透明で、山奥に
ある村に、10億円ほどの補助金が割り当てられる。すると関係各社にお鉢が回って
くる。仕事の範囲は放送設備だけでなく、電力会社の電柱を借りて、個別農家まで
CATVケーブルを敷設する通信工事が含まれる。たった一軒の加入であっても、敷設
対象になる。過疎の村に現場事務所を建て、複数人が数年間常駐していた。
　地上波デジタル放送開始前で、東京スカイツリーが建設されようとしていたころだ。
　放送受信機会の平等化ではあったが、JB国政治家による、農政敗北の言い訳でしか
なかった。1980年代、ガットウルグアイラウンドで農産物の輸入自由化圧力に敗北し、
農家の暮らしを守る名目で、巨額の補助金が、JB国からJA国に拠出されていたのだ。
　先の社団法人は、2009年5月、不明朗会計によって破産した。破産の原因は、同居
別会社「情報システム技術会議」に約6億4000万円の資産が流出していたためだった。
　情報システム技術会議に委託したお金は、副会長が株主となっている株式会社
グリーンフォーラムへ再委託されていた。要するに中間マージン横領だ。
　農協の組合員は、誰もが減反政策の弊害を語る。しかし農協組合員のなかには、
役所勤めをしていて二重に収入を得ている人もいた。
　働かず、減反することが収入になる、あれほど違和感に満ちた政策はなかった。
　筆者｢農協の闇」(講談社現代新書，2022年8月)によれば、ムラ社会JAで起きる
不祥事は、必ず握りつぶされる。保有契約額で、日本生命155兆円に次ぐ、97兆円を
保有する規模なのに、その職員モラルは低い。JA共済連の試験は、A4版の薄い冊子を
一度読んでおけば解けてしまうくらい易しい。顧客に適した契約ではなく、ノルマ
達成のため押し売りをする職員が横行する要因は、この出発点から始まっている。
　｢JA共済における不祥事件の現状とその課題」に、JA兵庫西の事例が取り上げられて
いる。内部資料よる事例に以下のようなものがあった。
　事例１　2020年11月　高齢の顧客の家を訪問し、年金共済で２つの契約を獲得。
　高齢者が、掛け金を払えない高額の契約であったが、解約には応じず、定期貯金を
解約して掛け金に充当するよう説得した。翌年1月、長女、次女が来店し，掛け金返還と
契約取り消しを求めた。
　事例2　未成年の娘が、祖母の代理をする母親になりすまし、祖母名義で終身共済、
医療共済、年金共済を２つづつ契約した。母親が来店し契約の無効を訴えた。
　事例3　建物更生共済で、1994年の契約開始時より、実際の面積の2倍で記載。
掛け金は2倍になっていたが、そのまま25年間、過払いさせていた。
　事例4　2021年12月、建物更生共済の加入者が3月に死亡し、相続手続きの相談で
遺族が来店した。ところが、本人が死亡しているにも関わらず、2021年11月に親族が
代筆して契約更新をしていたことが分かった。本人確認をおこたり契約書を受理した
ミスと説明される。これは研修事例でありながら、監督官庁には報告されていない。
　この内部資料に、過去10年間の不祥事の事案数が、JA全体と、共済事業について、
それぞれ明記されている。JA全体で、多い年で179件、少ない年で89件なのに対して、
共済事業では、多い年で45件、少ない年で16件となっている。ただ、この報告は、
合算されていて、できるだけ少なく見せる隠ぺいだった。同一人物による複数の事件、
あるいは同時期に起きた関連する事件は、1件として報告している。
　同一人物の案件なら、数十件でも数百件でも、1件になる。
　JAおおいたで2019年に契約された不正案件では、建物更生共済で727件、生命共済で
123件、あわせて850件だが、共済約款貸付の不正受給も合わせ、まとめて1件として、
大分県庁(監督官庁)に報告されていた。遵法精神にもとること甚だしい。
　ある地方の職員は、こんな証言をしている。「うちでは1億8000万円を横領した
職員がいて、新聞沙汰になったんだ。じつはこの職員には前科があって、以前に
2000万円を横領していた。驚くことに、農協はこのときなんのお咎めもせず、そのまま
その職員を金融の部署に置いてたんだ。そうしたら、今度は大金の横領だよ。本人が
悪いのはもちろんだけど、同じ金融部門で使い続けるのはどうかしてるよ。ただ、
うちの農協はこれがあたり前。不正は見て見ぬふりをするものなんだ。」
　もっと驚くべき証言もある。JAの職員であれば、パソコンに組合員の名前と顧客
番号を入力すれば、貯金残高から入出金の明細まで通帳の中身が丸わかりになる。
　共済商品の内容、組合員の家族構成も調べられる。その家族がJAに口座を開設
していれば、やはり同様の情報をおさえられる。つまり世帯当たりの資産が手に取る
ように分かってしまう。本書で、上対馬支店の西山が、まるでパルズゲームのように
不正を繰り返せたカラクリが、ようやく理解できた。
　JAでは県連合会の会長や地域の組合長が率先して職員を裏切るような行為を
している。共済事業の司令塔・JA共済連そのものが現場で起きた不祥事を隠ぺいして
いるのだから、組織に与える影響は計り知れない。
　職員は小さな不祥事を犯しても問題ないと勘違いしてしまう。
　筆者は弁護士・国廣正氏の「企業不祥事を防ぐ」(日本経済新聞出版社)や、
ダン・アリエリの｢ずる、嘘とごまかしの行動経済学｣を引用し警鐘をならしている。
　だがこれらのいましめが、JA幹部にどれだけ響くかは、こころもとない。
　2014年から2015年，安倍内閣が行った農協改革は、長い闇の歴史に切り込む初めての
改革であった。JA全中を60年ぶりに解体して一般社団法人に移行させたのだ。
　JA全中の監査権も同時に剥奪した。さらに公認会計士による財務監査を義務づけた。
　しかし、これで改革は進んだように見えるが、さにあらず。
　ほぼ全てのJAが、2017年に設立された「みのり監査法人｣に監査を依頼している。
　JA全中の全国監査機構にいた農協監査士が、この監査法人に出向し、内部監査士も
組合長が任命しているから、名ばかり改革のように見える。
　農協には五連会長といって、地方組織を束ねる有力者がいる。その職責は日本の
法律でいう公職ではないから公職選挙法の埒外にある。当の農協幹部でさえあきれる
信じられない選挙活動が横行している。
　JA福井には、五連会長が存在する。だが、JA越前たけふだけは仲間に入らなかった。
　64%の組合員が富田組合長の方針に賛成したからだ。JA越前たけふでは、農協で
初めて民間の保険を扱い始めた。2016年、同JAの子会社「株式会社コープたけふ」は、
民間の損害保険と代理店契約を交わし、2017年1月から同JAの店舗で取り扱いを開始
した。2019年6月からは、生命保険の販売も、同JAで手がけている。2021年度、保険の
代理店収入は7500万円になった。LA(営業)は27人で、LAの年収のおよそ半分を、この
保険収入でまかなえた。JAで「選択肢を増やす」ことが初めて行われたのだが、
同JAは異端児扱いされているそうだ。
　JAグループでは自分たちが企画・設計・開発した商品やサービス｢系統｣こそが絶対、
あるいはそれに近い感覚で受け取られている。JA以外の｢商系｣商品やサービスを、
地域のJAが利用することを、JA全中は嫌う。商系が扱う農業資材を購入したりする
ことに対して、妨害を繰り返す。やりすぎて独占禁止法違反で摘発されることも毎年の
ようにある。こんなjA社会で、JA越前たけふの取り組みは、一筋の光明だ。
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　ひとくくりにJAは悪と決めつけないで下さい。悪いのはJA全中ですから。


(参考)
　農協は｢総合農協｣と｢専門農協｣に大別される。後者は園芸や果樹、畜産や酪農など
品目別に農家が設立した農協で、ほぼ経済事業しか行っていない。同じ農協でも、
｢総合農協｣の扱う品目に、お米が含まれる。総合たる由縁が、このお米であり、
JA組織の本丸は、お米を扱う｢総合農協｣を指導するJA全中だ。JA中央会とも呼ぶ。
　先の備蓄米落札では、JA中央会と報道されているが、同じ組織体だ。
　専門農協の組合員数約12万5000人、総合農協の組合員数は約1036万人
(2021年度)。この内、正組合員は410万人だが、残りは準組合員630万人で、
準組合員には総会での議決権も役員の参政権もない。つまり協同組合員なのに、
権利を与えられていない。　また正組合員であっても、農家ではない正組合員が
346万戸(離村子弟の登録を含む)に対して、実際の営農農家は175万戸しかない。
　個々の総合農協の組織名は、JA兵庫西などになる。
　長崎県では、JA壱岐市、JAごとう、JA島原雲仙などがある。これらを単協といい、
全国に506の単協がある。
　全ての単協を底辺として、頂上にJA全中(一般社団法人全国農業協同組合中央会)が
存在する。付随して全国段階や都道府県段階に数え切れないほど関連団体、会社が
存在するが、これらの法人と監督官庁の関係は、ムラの外からは見えない。
　都道府県単位に、JA経済連(8組織)、JA信連(32組織)のふたつがある。かつては
47都道府県毎に存在したが、今は相次ぐ合併で激減している。
　総合農協は独立した経営母体で｢経済事業」｢共済事業」｢信用事業｣を行っている。
　｢信用事業｣で、JAバンク大阪のような専門金融機関もいくつかあるが、農林中金に
大半が統合された。JA経済連、JA信連と、県の｢経済事業」｢共済事業」｢信用事業｣の
会長職を兼任するのが、五連会長だ。
　JA共済連の総資産は日本の国家予算の半分ほどある。JA共済連の特権は、
子会社を作らなくても、生命保険、損害保険、共済保険をすべて扱える点にある。
　農林中金の貯金残高は、2023年末で108兆3824億円。
　先頃、外国債券の運用に失敗し、2025年3月期に、1兆8078億円の赤字を計上したが、
当事者の危機感は薄い。
　共済事業は、ライフアドバイザー略称LAが営業をしている。全国19万人の農協職員の
うち2万人がLAをしている。通称｢LAの甲子園」で表彰されるLAは毎年数百人だ。
　西山は、1997年度から、わずか1年を除いて、ずっと優績表彰を受け続けていた。