2025.05.20
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匸P コーヒーブレイク
世界最凶のスパイウェア・ペガサス
PEGASUS,2023
How a Spy in Your Pocket Threatens the End of Privacy,
Dignity,and Democracy
(ローラン・リシャール，サンドリーヌ・リゴー)
Laurent Richard & Sandrine Rigaud 著 江口泰子 訳 早川書房 2025.01.25
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パリに本社を置くフォービドゥン・ストーリーズは、その名の通り｢禁断の記事｣を
配信するNPOで、ローラン・リシャール氏は同社の創始者、サンドリーヌ・リゴー
女史は編集長をしている。ペガサスは、他人のスマホに勝手に侵入し、全てを監視する
スパイウェアだ。独裁者が購入し、自分の悪事を知りうる者を監視し、脅し、投獄し、
殺害するツールにしていた。アムネスティ・インターナショナルのサイバー・テクは、
2020年10月、フォービドゥン・ストーリーズのふたりに、感染の実態調査を依頼した。
ふたりは、世界10カ国17紙50名のジャーナリストに呼びかけ、秘密を守らせ、
2021年7月16日から4日間に分けて、ペガサス告発記事の世界一斉配信に成功した。
結果、年間約2億5000万ドルを稼いでいたイスラエルのNSOは破産に追い込まれた。
2021年7月23日、日本で"東京オリンピック2020"が開催される直前の快挙であった。
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ある情報提供者が、5万人の携帯電話番号をアムネスティ・インターナショナルに
持ち込んだ。軍事兵器ともいうべきスパイウェア、ペガサスの標的リストであった。
イスラエルのNSOは、3人の創業者の頭文字を社名にしたIT企業で、アイフォンの
脆弱性を突くスパイウェア・ベガサスを開発し、運営方法の指導までセットにして
販売していた。5万人のスマートフォン所有者は、テロリストばかりではなかった。
それどころか、著名な政治家、人権活動家、ジャーナリストが多く含まれていた。
2018年、トルコのサウジアラビア総領事館で殺害されたジャマル・カショギ記者は、
ペガサスで追尾されていた。アップルのスマートフォンは、セキュリティーが
しっかりしていると信じられていたが、ショートメッセージに画像機能を追加した際、
重大な脆弱性が生じていた。NSOはこれを発見し、利用者がショートメッセージを
開かなくても、ノンクリックで感染する仕組みを開発した。ベガサスに感染すると、
他人から自由に監視され、知らない間にすべての情報を盗み取られてしまう。
サウジアラビアは、NSOのクライアントのひとつであったが、サルマン皇太子の
個人的依頼に応じ、ジャマル・カショギ記者の動向を把握していた。独裁者のニーズに
応じたNSOの売上は、2020年で年間2億5000万ドルに及んでいた。
人権侵害を暴き、人権侵害者の責任を追及する勇敢な人々を保護することが、
アムネスティ・インターナショナルの大きな使命であった。
5万人のリストに、名前はなかった。従って、このリストだけで、誰が標的なのか、
そのスマートフォンはすでに侵入されたのか、未遂の状態なのかも分からなかった。
アムネスティのセキュリティラボに所属する二人の専門家の手元には、被害にあった
スマートフォンはなく、フォレンジック分析をするためのデータもなかった。
ならば、感染した携帯そのものを入手し、調査を前進させる必要がある。
アムネスティ・インターナショナルの、ダナ・イングルトン女史は、信頼できる
ジャーナリスト、フォービドゥン・ストーリーズのローランと、サンドリーヌに声を
かけ、この困難な課題を依頼することにした。
ジャーナリストは本来、特ダネに目を光らせ、誰よりも早く報道したがる連中だ。
そんな連中に情報源を明かさず、秘密裏に感染したスマートフォンを回収し、検査
データをアップロードしてもらわねばならない。しかも今後、さらに多くの仲間を
引き入れてもらわねばならない。これほど困難なミッションはなかった。
旧ベルリンのアパートで、ローランと、サンドリーヌに待機してもらい、5万人の
リストと格闘してきたふたりの技術者を引き合わせ、事情を説明させることにしたが、
引き受けてくれるかどうかは未知数であった。しかし、ふたりが初めて見せてもらった
5万人のリストのなかに、ハディージャ・イスマイロフの名があった。
これが合意の決め手であったかもしれない。彼女は首都バクーで自宅軟禁されて
いるが、ローランとサンドリーヌの旧知だった。アゼルバイジャンでアリエフ大統領の
汚職問題を15年以上に渡って追及し、極めて卑劣な攻撃を受けてもひるまず、
報道活動をやめない勇敢な女性であった。そして数々の表彰も受けていた。
KGBあがりの前大統領の死去にともない、世襲で次の大統領に就任したアリエフは、
2005年から、周囲の政敵を排除し、大統領一家の汚職を調べるジャーナリストを全て
買収し、調査をやめさせていた。しかし、ただひとりエマル・ヒュセイエフ記者だけが
大統領の腐敗調査をやめなかった。そして自宅アパートメントの吹き抜けで、
至近距離から6発の弾を浴びて暗殺された。
ハディージャは暗殺の話を聞いた夜、ほかのジャーナリストも有罪だと言いきった。
暗殺された彼は、大統領一家の腐敗に声を上げた、たったひとりの人間だった。
たったひとりだったから命を奪われたのだ。ひとりの口を封じれば、黙らせるのは
簡単だと彼等が考えたからだ。わたしたちがもっと多ければ、ジャーナリストを
ひとり殺したところで、完全な沈黙が戻るとは期待しなかったはずだ。だから、
わたしたちにも彼の死に責任がある。ハディージャの固い決意は、リストを見た
ふたりも共有していた。彼女が標的になっているなら引き下がるわけにはいかない。
パリに帰ってから、感染したスマホを調べ、2度の重要ミーティングを設営し、
一斉報道するまでの全行程をスケジュールしたのは、サンドリーヌであった。
ジャーナリストを集め、短期間に衝撃的記事を世界に報道する激務に耐え抜いた。
ふたりが、セキュリティラボの技術者と初めて会ったのは、2020年10月であった。
待ち合わせたアパートに現れたクラウディオ・グアルニエリは、アムネスティ・
インターナショナルで上級テクノロジストを勤める30代の男で、青白い顔をした亡霊の
ような男であった。ダナカ・オキャロルは、20代の痩せこけた若い男で、2018年初め，
脅威リサーチャーとしてリクルートされた、アイルランド出身のITオタクであった。
クラウディオが政治的、哲学的な使命に目覚めたのは、アラブの春とその余波を
見ていた頃だった。エジプトやモロッコ、バーレーンなどの国家では、反体制派の
意見を消し去るために、フランス企業が開発したサイバー監視兵器を使っていた。
アラブ世界の自由と民主主義のために闘った多くの人が亡命し、投獄され、命を
奪われた。クラウディオの異様な仕事ぶりを間近で見ていた同僚はこう証言する。
PC画面に次々と現れる残虐な情報を覗いているうちに、段々腹がたち、爆発寸前まで
怒りが膨れ上がると、彼は脇に備え付けたドラムセットに向き直った。
そしてスティクを手にして、すさまじい勢いでドラムを連打した。
4、5分して、ようやく怒りが収まると、再び画面に向かっていったという。
専門家と一般人のセキュリティ不均衡は絶望的ともいえる。クラウディオは、
サイバーセキュリティの民主化と、それを広く普及させることに情熱を注ぎ込んだ。
「国家と市民のあいだには、テクノロジーの大きな不均衡がある」｢受動的、能動的
サイバー監視システムに数十億ドルがつぎ込まれている。アメリカだけでなく、
そうする余裕のあるどこの政府も同じだ」「優れたハッカーが高額の報酬を約束され、
大企業に雇われている」「しかし現状を変えようとする野心的な公的プロシェクトは
資金難で、長期にわたって活動を続けられない」「セキュリティは権利であるべきだ。
その権利は行使され、保護されなけれはならない」「プライバシーは表現の自由の
不可欠な要素であり、表現の自由は健全な民主主義の必須条件だ」
こうした信念で、クラウディオは、2014年に自分のデバイスがスパイウェアに感染
しているかどうかを自分で確かめられるツールを開発し、公開した。
だがそのソフトはまだ洗練されておらず完成度は低かった。理想と技術のギャップを
埋めてくれる若者を探しているうちに、天才的ハッカー、ダナカに出会った。
2018年夏、ダナカと働き始めて2、3カ月後、アムネスケィ・インターナショナルの
職員から、ワッツアップのメッセージで相談を受けた。ワシントンDCのサウジアラビア
大使館前で行われる予定の抗議デモに対する緊急警告メッセージに関してであった。
正常なサーバーでは、攻撃に関する情報、攻撃者の身元に関する情報は、厳重に
秘匿されていて、そこにアクセスすると、｢ご指定のページが見つかりません」と、
404エラーが表示される。ところが感染したサーバーは、警告応答をしないように
改変されていた。これが、ペガサスの痕跡が発覚した最初のケースであった。
ふたりはここから一種のデジタル指紋を見つけ出し、同様の設定を持つサーバーを
探し回った。そして発射台として機能する約600台のサーバーを見つけ出した。
そのころカナダのトロントにあるシチズンラボのリサーチャーが、数年に渡って、
この特定のサイバー監視プロバイダーを追跡していた。2016年、UAEの人権活動家の
スマホで感染が確認でき、ようやく監視ネットワークインフラの全体像が明らかに
なった。シチズンラボはただちに数百のドメイン名を公開した。
すると、その企業は即座に反応し、全システムを再構築し、ドメイン名を変更して
しまった。ところが彼らは、誤って2つだけ、既存ドメインを再利用するミスを冒して
いた。クラウディオとダナカは、シチズンラボが公開したドメイン名を調べ、NSOが
変更し忘れた2つのドメイン名を見つけだした。新インフラの運用企業もNSOであった。
「ペガサス匿名化伝送ネットワーク」と名づけたこのネットワークは、連続する
サーバーを経由して、スマホの情報を盗み出す接続プロキシであった。
サウジアラビアの特定の機関は、ペガサスを利用し、標的ヤヒヤ・アスィーリー
(軍人)のスマホに、2018年5月、ショートメッセージを送っていた。
その数ヶ月後、ジャマル・カショギが暗殺されていた。これは動かぬ証拠だ。
ダナ・イングルトンは、この調査結果を公表し、NSOに厳しい非難を浴びせた。
そしてNSOの輸出許可を取り消すようイスラエル国防省に要求した。だが、彼らは
その訴えを退けた。テルアビブの法廷もNSOに対する複数の訴訟を却下した。
NSOの共同創業者シャレブ・フリオ、オムリ・ラヴィのふたりは、アメリカの電話
番号がハッキングされたケースはないと言いきる。だが、ベルリンでの打ち合わせ
直後の2019年、このウソが明白になった。ワッツアップがNSOを提訴したアメリカの
裁判で、ペガサスの被害者と特定された電話番号と、流出データの記載とが、たくさん
一致していたのだ。政府関係者の電話番号も流出データに多く発見された。
アメリカ人も被害者と分かったが、クラウディアの目線は、手厚く保護されている
人々ではなく、中東諸国に向いていた。
アムネスティ・テクは、セキュリティラボと改名し、独裁者に見張られる中東諸国の
人々を救済することに集中した。だがそのころのフォレンジックツールは、天文学的な
数のIPをスキャンする古いものだった。NSOは、悪事が発見され、公表される都度、
システムを改版して姿を消した。セキュリティラボが公表した第三バージョンの
インフラもすぐに閉鎖され、新たに第四バージョンのインフラを構築していた。
さらに2019年秋には検知を防ぐ追加の障壁｢ポートノッキング｣手法も構築した。
合い言葉をノックするとドアが開く禁酒法時代の潜り酒場のようものであった。
ふたりは、2021年3月には、次元の違うフォレンジックツールの開発を進め、
NSOの技術者に競り勝とうとしていた。イスラエルの諜報機関、2800部隊は、国を
あげて選抜された精鋭ぞろいだが、金につられて転職した連中がNSOにいた。
転機になったの2台のスマホ、マーティ・モンジブと、モロッコのジャーナリスト、
オマル・ラディのスマホであった。これをフォレンジック分析したところ、このなかに
ペガサスの全貌を解明することのできるコマンド痕跡が見つかったのだ。
マーティ・モンジブはモロッコのモハメッド六世を積極的に批判していた大学教授で
2015年に刑事告発され、2019年はフランスにいたが、欠席裁判で5年の実刑が下るのは
ほぼ確実だった。マーティ・モンジブは、セキャリティラボに、自分のアイフォンが
ペガサスに感染しているかどうか調査を依頼してきた。このなかに大量のデーターが
溜まっていて、ここにbh.cが潜んでいた。BridgeHeadの略で、初期のエクスプロイト
(脆弱性を攻撃する不正なコードやプログラム)の痕跡であった。
bh.cが侵入したスマホは、全防禦網を突破され、iOSのルート権限を取得される。
新しいフォレンジックツールが完成すれば、アイフォンでは、80％の精度で感染を
特定できる。(アンドロイドOSはログ情報が少なく、ここまでうまくはいかない）
フォービドゥン・ストーリーズは、ベルリンで大仕事を依頼される直前まで、
メキシコ《プロセソ》誌の記者・レヒーナ・マルティネスら119人が、2020年に殺害
された事件を追いかけていた。編集長のホルヘ・カラスコと、カルメン・アリステギ
記者の協力で、カルテル・プロジェクトの記事をしあげ、2020年12月6日に世界中に
同時配信した。コンソーシアムを構成する18カ国、25の報道機関、計60人の記者が、
このプロジェクトに参加していた。麻薬カルテルは、フェンタニルの原料となる化学
物質をアジアから輸入してメキシコ国内で加工し、スペインでマネーロンダリングして、
イタリア、オーストリア、アメリカで拳銃を買い付ける。
このコンソーシアムでは、すべての報道パートナーが合意した取り決めがあった。
第一に、最初の記事は約束の時間より前に配信してはならない。第二に、その後の
数日間、記事は決められた通りの順序で配信する。フライングは許さない。
配信後、世界中の新聞の第一面は、全段抜きで、次の見出し記事で飾られた。
レヒーナ・マルティネス殺害は氷山の一角
メキシコ人ジャーナリスト殺害事件 いまもつきまとう未解決の疑問
殺されたジャーナリストの物語 メキシコの暴力と腐敗の時代の肖像
強盗と処理されたジャーナリストの残酷な殺人事件 世界中の記者が真実を暴く決意
この成功で、フォービドゥン・ストーリーズは、世界中の一流ジャーナリストに、
ペガサス・プロジェクトを成功に導く実力をつけていることを証明した。
ふたりがベルリンから戻ったあと、10月から翌年2月にかけて、5人の30才前後の
自社メンバーは、ペガサス・プロジェクトを5つに仕分けして分担した。
ローランとサンドリーヌは、親しいジャーナリストに働きかけ、懸命に仲間を集めた。
ピュリッツァ賞を受賞したワシントン・ボストのデイナ・プリーストは快く協力者に
なってくれた。南ドイツ新聞のバスティアン・オーバーマイヤーは、パナマ文書で、
多くの富豪たちが長期間、脱税していた実態を暴いたが、彼も味方になってくれた。
彼は、パナマ文書で、情報源"ジョン・ドゥ"の保護が最優先であったと訴えた。
今後プロジェクトに参加するジャーナリストにも「情報源は確かである｣という、
ふたりの言葉を信じるしかないと助言してくれた。
第一サークルは、4つの報道パートナー《ディ－・ツァイト》《南ドイツ新聞》
《ル・モンド》《ワシントン・ポスト》から選出された20数人で構成された。
2021年3月初め、20数人は半信半疑で、ル・モンド社の半円形のセミナーホールに
集まった。3日間の説明と質疑応答が行われたあと、サンドリーヌは大胆にも、調査
結果の公表を6月にしたいと宣言した。「計画を立て、この会合のあと直ちに
取りかかるなら、できないはずはありません」
時間をかけるだけ、漏洩リスクが日に日に増大するからだった。
第二サークルは50人規模で取り組むことで合意された。最終的に、技術的内容を
第三者のラボに検証してもらうことも懸案事項で、この課題は、誰もが納得する
信頼性の高いシチズンラボに依頼することで決着した。いよいよ終盤にさしかかり、
フォレンジック分析候補者の名前を次々に読み上げているとき、クラウディオが
マイクを要求した。「不快な発言をするつもりではないんですが、僕たちには時間も
資源も限られていることを、忘れないでいただきたい」これはジャーナリストに
向けられた発言だが、胸のうちにしまっていた最大の危惧も含まれていた。このとき、
確信を持って提供できるフォレンジックツールは、まだ完成していなかった。
まだ155ページ目だが、最後の430ページまで、ここからはテンポ良く進展する。
4月末、《ガーディアン》紙の調査編集長ポール・ルイスに連絡をとった。彼は参加を
快諾し、小さなチームを集めてくれた。そして第二サークル全体を牽引してくれた。
第二サークルは3日半で、5月11日の午後に始まった。今度はバスティーユ地区の
オフィスで、参加自由のゆるやかな形式のワークステーションを設けた。安全な
ラップトップを使い、新しいメンバーには今までの情報を整理して解説した。
画面には世界中の国番号が付いた何万件もの電話番号が映し出された。
ポール・ルイスは流出データを見て、心底驚いた。フランスのマクロン大統領、
メキシコ大統領、パキスタン首相、ベルギーの元首相、UAEの王女、ダライラマ14世の
側近、世界中の人権活動家や人権派弁護士、ジャーナリストが数百人、投獄されたか
暗殺されたジャーナリストの名前もあった。会議の終わり近くで、クラウディオが
重要な発言をした。セキュリティラボの追跡にも限界があるという懸念だった。
「わたしたちがフォレンジックを行っていることを、彼らもまちがいなく気付いて
いると思います。彼らは対策をこうじてきます。あと4週間もすれば、わたしたちの
フォレンジックはますます難しくなります」
5月25日「状況は切迫しています」とサンドリーヌは伝えた。現在進行形で各地で
進んでいる重要プロジェクトを完了させたい、最低でもあと2～3カ月は必要だとする
声を制止し、7月16日からの4日間で一斉に報道するスケジュールを発表した。
これでも発表当日まで、ペガサス・プロジェクトの機密を保てるか心配だった。
発表の1週間前から、クラウディオとダナカを安全なホテルに隔離する必要もあった。
NSOのユーザー国家は、スナイパーを差し向ける恐れがある。NSOに事前通告した
ユーザー国家は、たとえばアゼルバイジャン、バーレーン、ハンガリー、インド、
カザフスタン、メキシコ、モロッコ、ルワンダ、サウジアラビア、トーゴ(西アフリカ)、
アラブ首長国連邦であった。しばらく、サンドリーヌは眠れない夜を過ごした。
翌週、NSOのの弁明がウソであり、独裁国家に販売されている事実は、世界中に
同時配信された。報道に協力したジャーナリストへの謝辞が末尾にある。
サンドリーヌはそこに、100名近い記者たち、編集者たちの実名を並べている。
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コロナ禍がまん延するなか、命がけでスパイウェァの感染防止に成功した物語
