2023.04.06
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匸P　　コーヒーブレイク　

　　　ロシア闇の戦争
　　　　　プーチンと秘密警察の恐るべきテロ工作を暴く
　　　Browing up Russia,2007

　　アレクサンドル・リトビネンコ　ユーリ－・フェリシチンスキー 　　
　　Alexander Litvinenko and Yuri Felshtinsky 著　　光文社　2007.06.30
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　ソ連が崩壊したあと、政府首脳たちはkGBの解体に失敗し、彼らの荒技、要人を契約
殺人で黙らせる悪弊を継承させてしまった。KGB首脳は、組織を解体すると見せかけて
細かく分散した上で、何度も名称を変え、組織の実態を隠しおおせた。かくして再集約
されたFSBは、国の中枢を牛耳り、国民の眼を外に向けさせるため、チェチェン人
テロリストの仕業を装い、1999年9月、連続アパート爆破事件を仕組んだ。
　300人を超える市民を殺戮した爆破テロは、すべてFSBが綿密に計画し、チェチェン
戦争の口実にしたもので、プーチンを大統領に押し上げるためのお膳立てだった。
　本書は、1999年9月22日夜、リャザン市で失敗に終わったアパート爆破未遂事件の
顛末を詳述し、これが演習などではなく、FSBによるテロ工作であったことを暴いて
いる。著者リトビネンコは、このおぞましい自国民殺害組織の手によって殺害された。
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　1999年9月24日、エリツィン政権は一連のアパート爆破事件をチェチェン人による
テロと決めつけ、その報復として第二次チェチェン戦争に踏み切った。
　この戦争の推進役が、8月9日に首相代行、8月16日に首相に任命された前FSB長官、
ウラジーミル・プーチンであった。それまで無名だったプーチンは、連日テレビに
登場し「憎きチェチェンのテロリストの撲滅」を煽り立て、たちまち知名度を上げた。
　そして、2000年3月の大統領選挙に立候補し予定通り当選した。
　1997年、FSB職員のリトビネンコは、ベレゾフスキーや、内部告発者トレパシキンの
暗殺を命令されたがこれを拒否、98年11月に記者会見を開いて事実を暴露した。
　そのため彼はFSBを追われ、2000年に家族を連れてイギリスに亡命、ロンドンで
在米ロシア人歴史学者フェリシチンスキーと本書をまとめあげた。
　本書には、2002年7月ロシア下院での公聴会のやりとりが全文掲載されている。
　そのハイライトとなったのが、ゴチヤエフ自筆の資料B(2002年4月24日)であった。
　その後提出された資料C(2005年2月)によって、FSBの暗躍はさらに明らかにされた。
【資料B・ゴチヤエフ供述・2002年4月24日】(要旨)
　私はカラチャイ・チェルケス共和国のチェルケス市生まれ、地元の第三中学校を
卒業して、16才の時にモスクワに出て来て専門学校で学んだあと徴兵された。
　退役後、故郷にもどり２年後にビジネスをしようとモスクワに戻った。1996年に
結婚し、建設業の会社を興した。
　1999年6月、小中学校時代の友人が訪ねてきて、食料品店の仕事を一緒にしようと
持ちかけてきた。初めにミネラルウォ－ターの調達を頼まれ、次にモスクワ南東部で
倉庫を借りる手助けをした。名前は明かせないが、この男はFSBのエージェントだった。
　9月9日の午前5時、この男が私の携帯電話に、グリヤノフ通りの倉庫の地下でボヤが
あったのですぐに行ってくれと言ってきた。その時私は友人の家にいた。
　わかったと答えてでかける支度を始めたが、テレビをつけて、事件のことを知った。
　それで出かけるのをやめて様子を見ることにした。
　9月13日、カシルスコエ街道のアパートで爆発が起きて、自分ははめられたのだと
わかった。すぐに警察、救急、消防に電話をかけ、私があの男に手助けして借りた
二カ所の倉庫、ボリソフスキエ・プクドイとカポトニャのことを話した。それで
この二カ所の倉庫では爆発が起きずに済んだ。
　だが私は爆破事件の容疑者だと宣告され、ついには事件を組織した主犯に仕立て
られた。カラチャエフスク市の内務当局は、私がチェチェン人だとモスクワに報告した。
　だが私は一度もチェチェンに住んだことはない。こんな状況で私に安全の保証は
ないがジャーナリストと会って質問に答える用意はある。(詳細は後日お話する)
【資料C・ゴチヤエフ供述・2005年2月】(要旨)
　誰もが知っている事件の真相を話そう。事件当時、ドイシェコフ・ラマザンという
小中学校時代の古い友人が私を訪ねてきた。学校を卒業して以来の再会だった。
　あるとき、いっしょにミネラルウォ－ターの仕事をしないかと持ちかけ、卸業者を
見つけて欲しいと私に懇願してきた。それで会社の同僚で同郷のチンチコフ・ラウリに
万事をまかせ、彼がラマザンとの仕事を取り仕切った。しばらくしてモスクワ南部と
リャザン市に倉庫を借りたいので手を貸して欲しいとラマザンが頼んできた。
　私はいい場所を探してやってくれとラウリに頼み、ラウリは候補地をたくさん見つけ
ラマザンに紹介した。私はふたりに金を渡し、ラウリとラマザンがいっしょに物件を
借りに行った。倉庫はラマザンの個人名義で借りた。
　グリヤノフ通りの建物で爆発が起きた時、私は友人の家にいた。ラマザンが電話して
きて、緊急の用事があるからすぐに会いたい、どこにいると聞いてきた。朝の5時頃
だった。私は「こちらから行く」と告げ、支度を始めた。ちょうど友人宅を出ようと
したとき、テレビのニュースを見て、事件のことを知った。
　すぐにグリヤノフ通りまで車で行き、そこですべてを見た。ラマザンに会うのは
やめて少し待とうと決めた。しかし9月13日、カルシスコエ街道の建物で二回目の爆発が
起き、自分の写真がテレビの画面に映しだされたのを見て、自分は嵌められたのだと
事態を理解した。すぐにラウリと連絡をとってほかの倉庫の場所を聞き出し、警察と
救急に電話して二カ所の倉庫、ボリソフスキエ・プクドイとカポトニャの建物のことを
話した。それからモスクワを離れ、カラチャイ・チェルケスに帰った。そこで当時犯罪
捜査官として働いていた兄弟から、警察が私を必死で捜しており、私を生かしたまま
捕まえるなという秘密司令が出ていることを聞いた。それから今日まで、私は身を
隠しているしかなくなった。いまは、ラマザンがFSBで働いていることを知っている。
だが、当時はFSBとつながりがあるなどとは思いもしなかった。ラウリは、事件のあと
まもなく殺された。遺体はカラチャイ・チェルケス共和国のモスコフスキーという町で
見つかった。連中はラウリを殺し、遺体を焼却しようとした。FSBは事件の重要証人を
消したのだ。事件の直後、私の写真がテレビ画面に映しだされ、倉庫を借りた人物だと
伝えていたが、グリヤノフ通りの物件を貸した人物は、私の写真を見て、自分が物件を
貸し出した相手とは認めなかった。彼が答えた特徴はラマザンと一致する。ラマザンの
写真を見せれば、物件を貸した相手はラマザンだと認めるだろう。ほかにも、爆発が
ロシアの特殊機関によって準備され、実行されたことを明らかにできる証人がいる。
　しかし今日、彼らはきわめて危険な状況のもとにあり、すべてを明らかにできない。
　特殊機関は一連の爆破事件をとにかくチェチェンと関連づけたかった。彼らはさらに
カラチャイ・チェルケスでの戦争も計画していた。彼らの目的は達成され、現在大量の
軍が共和国に展開されている。操り人形のマスコミはカラチャイ人テロリストに関する
情報を絶え間なく流し続けている。モスクワの爆破事件だけでなく、すべてのテロ事件は
カラチャイ人の犯行となる。戦争を始めるのに必要な「敵のイメージ」は恐ろしければ
恐ろしいほど効果的だ。ロシアはテロと戦っていると誰もが考えるだろうが、現実には
普通の人々を攻撃している。
　最後に、アパート爆破事件の真実を知りたいと願うすべての人たち、とくに事件で
犠牲となった人たちに、私はいいたい。独立した国際的な調査を実施する必要があると。
　いまロシアで権力を握っているのはFSBだ。このおぞましい組織の歴史を思いおこ
そう。いまやロシアの政治の実権は彼らの手中にある。すでにすべてが明らかになって
いる。これ以上なにを話さなければならないというのか。
　2002年4月の資料Bを公表したのはアレクサンドル・リトビネンコであった。
　巻末資料Aは、2002年7月25日、ロンドンとモスクワを電話で結んだ社会委員会
公聴会の記録で、ロシアの下院議員セルゲイ・コワリョフが議長をしている。
　モスクワ側の参加者は、コワリョフ議長、セルゲイ・ユーシェンコフ副議長、書記、
委員10名と、各国の報道陣公聴となっている。ユーシェンコフはチェチェン人に対する
人権侵害に反対するユーシェンコフ委員会を立ち上げた議員だが、この公聴会の後、
2003年4月に、サイレンサー銃で３発撃たれ、殺害されている。
　ロンドン側の参加者は3人で、アレクサンドル・リトビネンコ、タチヤナ・モロゾワ、
ユーリー・フェリシチンスキーであった。リトビネンコは2006年11月に殺害された。
　タチヤナ・モロゾワ、アリョーナ・モロゾワ姉妹は、1999年9月、モスクワの
アパート爆破事件で母親を失った被害者で、ミハイル・トレパシキンが弁護を引き受け
訴訟裁判中であった。トレパシキンも、同僚の秘密暗殺部隊に命を狙われていた。
　それでも独自に調査を続け、古い新聞を見つけ出し、当初の真犯人の似顔絵が、
後日ゴチヤエフに差し替えられていた事実を突き止めた。似顔絵の容疑者を目撃した
男は刑務所に連行され、犯人はゴチヤエフだと供述させられていた。こうした証拠が
発見され、この7月の公聴会でゴチヤエフ供述の信憑性が高まった2002年10月、今度は
トレパシキン弁護士が逮捕され、4年の実刑を言い渡されて収監されてしまった。
　本書には、エリツィン大統領に宛てたトレパシキンの手紙も全文掲載されている。
　彼はFSBを内部から改革しようとして1997年5月5日、この手紙を出した。だがその
結果、銃の不法所持および国家機密漏洩というでっち上げの罪により逮捕された。
　要するにエリツィン(1931-2007)も腐敗したFSB保護者のひとりで、引退したあとも
汚職を摘発しないと誓ったプーチンに身をまかせていたのだ。（以下は手紙の要旨）
　　連邦FSB職員らによる違法行為について
　　尊敬するボリス・ニコラエヴィッチ
　私は1996年より口頭および報告書という形で何度も提言をおこなってきましたが、
N・D・コワリョフ長官(大将)もその他のFSB幹部もなんら対策を講じようとはして
いません。複数の犯罪集団があらゆる手段を講じてFSBに浸透を試みています。
　犯罪集団の入隊は、M・I・バルスコフとN・D・コワリョフのもとで激増しました。
　1994年、総額300万ドル以上の密輸品を積んだ9台のワゴンを押収しましたが、上官の
命令で運び出され、違法に売却されました。私自身が金品の強奪にかかわったという
根も葉もない疑いをかけられ、それ以上の捜査をおこなうことができませんでした。
　FSBの作戦に関する情報は、犯罪組織にリークされていました。
　FSB長官のコワリョフとパトルシェフ、そしてゾートフは、犯罪組織による重大犯罪を
取り締まる活動を妨害しています。我々は信頼できる部下だけで、ソリジ商業銀行から
15億ルーブルと3万ドルを強奪した容疑でチェチェンの犯罪組織グループのメンバーを
逮捕しました。逮捕者には、警備会社「コブラ9」代表で陸軍参謀本部のグループ
リーダ－、モスクワ市経済犯罪対策部の捜査係官(警察上級中尉)が含まれていました。
　銀行への侵入の補助をしたとして逮捕された人物の中には、犯罪組織のメンバーと
連邦内務職員の三人、首席捜査係官(警察少佐)、交通警察検査官(警察少佐)、警察准尉が
含まれていました。この犯罪が摘発されないよう参謀本部のタラセンコ少将が実質的
アドバイスを与えており、その報酬として毎月5000～10000ドルを受け取っていました。
　初動捜査で、上記の犯罪グループのメンバーが強奪事件だけでなく、モスクワや
チェチェンで起きた殺人事件にもかかわっていること、またモスクワ郊外にある
無許可の倉庫に武器・弾薬を貯蔵しているほか、軍の物資集積所から武器・弾薬を
持ち出し、チェチェンの軍事作戦地区へ運んでいることも明らかになりました。
　1996年2月8日、作戦を妨害した容疑で私を処罰せよとの命令が下りました。
　私が所有しているデータによると、前述の犯罪グループは事件の捜査を妨害する
ための費用として10万ドルを充当しており、メンバーたちは「FSBと内務省と国防省を
買う」程度の資金ならじゅうぶんにあると言っています。
　彼が逮捕された同じ10月の夜、チェチェン人過激派によるモスクワ劇場占拠事件が
起きた。モスクワの人々はパニックになり催涙ガスで多数の死者が出た不手際を追及
しなかった。後日、劇場占拠現場で唯一生き残ったテルキバエフは、ノーヴァヤ・
ガゼータ記者アンナ・ポリトフスカヤさんに自分がFSBにはめられたと告白している。

　リャザン市はモスクワの南東140キロにある地方都市だ。
　9月22日夜に計画されたアパート爆破未遂事件に関しては、FSB長官パトルシェフが
2日後にあれは演習だったと発表したが、リャザン州のFSBも、警察も全く知らされて
いなかった。これほど重大な演習を事前連絡もせず、実行した例はほかにない。
　リャザンの住民は、9月に入ってすでに4度もアパート爆破事件が起きていたので、
不審な行動をする車には敏感になっていた。
　9月22日午後9時15分、地区警察に電話が入った。目撃者は「10分ほど前に24時間営業の
お店の敷地に乗り入れた白のジグリから、男二人と若い女が降りてきた。12階建ての
アパートを下見したあと、入り口付近に車を止めて地下室に袋を運びはじめた。
　男の一人は口ひげをはやし、女はトレーニングの上下を着ていた。三人は車に戻り
走り去った」と知らせた。それなのに警察はもたもたしていた。彼らが現場に到着した
のは9時58分だった。警察隊は地下室に突入、77世帯が住むアパートの地下室で、
50Kgの砂糖袋３つを発見した。一番上の袋に裂け目があり、電子装置のようなものが
のぞいていた。絶縁テープを巻いたケーブル数本と時限装置があった。驚いた警官は
地下室から飛び出し、部下たちに住民を避難させるよう指示して散っていった。
　およそ15分後、応援部隊とリャザン州内務局長が到着し、爆発物の入った袋はFSB
代表の立ち会いのもとで非常事態省が持っていった。
　裂け目の入った砂糖袋にはバッテリー3個、電子腕時計、手製の起爆剤からなる
簡単な起爆装置が仕込まれていた。爆発予定時刻は翌木曜日の午前５時半であった。
　リャザン内務省の爆弾処理班はきっかり11分で起爆装置を解除した。中身をガス
分析官の協力を得て分析したところ「ヘキソーゲン型爆薬の気化物質」が検出された。
　袋の中身は、みたところ砂糖とは似ても似つかない代物だった。黄色くて、小さな
バーミセリのような顆粒だった。それはまさしくヘキソーゲンであった。
　翌日内務省の広報室は「問題の物質を分析した結果、ヘキソーゲン・ガスが検出
された」と発表した。だがこの時、FSB本部は起爆装置と３つの袋を回収し終えており
追加の検証は行えなくなっていた。FSB本部は後日起爆装置はダミー、袋の中身は砂糖で
あったと説明した。しかし袋に書かれたチェチェンらしき砂糖会社名は実在しなかった。
　夜中に警報を聞いた住民は着の身着のまま通りへ飛び出した。寒い夜だったが、
彼らは数時間、寒風吹きすさぶ屋外で足踏みをして過ごした。アパートの立ち入りは
禁止された。それでも体調がすぐれず部屋を離れられない体の不自由な老人数名は
建物内に残っていた。老いた母親に付き添って残った娘は、爆発の恐怖におびえながら、
眠れない一夜を過ごした。演習と開き直った連中は一切の保障に応じなかった。
　地元のFSB管理局長アレクサンドル・セルゲーエフ少将は、住民の無事を喜んだ。
　目撃者のカルトフェリニコフは時の英雄となり市当局からカラーテレビを贈られた。
　翌朝、各メディアは「リャザンで爆発テロ失敗」と衝撃的なニュースを報じた。
　9月23日午後7時、「本日、プーチン首相はグローズヌイ空港の空爆を発表しました」
との報道があった。そしてリャザンでの緊急事態についてもプーチンは言及した。
　「私は何か手抜かりがあったとは思わない。袋には爆薬が入っていたわけで、むしろ
発見されたことを前向きに捉えたい」　この時、プーチンは演習とは言わなかった。
　モスクワ市当局は9月23日、テロ攻撃から守るため徹底的な予防措置を講ずるよう
通達を出した。警察官はあらゆる家屋をくまなく捜索し、市内に入る車両も例外なく
取り調べた。テロ対策委員会議長のルシャイル内相も、リャザンの一件は重大な犯罪
行為でありますと発言した。そのうえで　翌24日にはリャザン市民に賞賛の言葉を
贈り、各部局から人を選抜して監視チームを即刻形成しますと発表した。
　9月24日、朝刊各紙は未遂に終わった事件の詳報を伝えていた。
　だが、この時点でもFSBから「演習」についての発表はなかった。
　3人の容疑者はリャザン市内に潜伏していた。FSBリャザン州管理局はテロリストの
潜伏先を特定しようと電話の傍受を進めていた。そして幸運なことに電話会社の女性
交換手がモスクワとの不審な通信を傍受したとの知らせが舞い込んでいた。
　「一人ずつ脱出しろ。街じゅう警官だらけだ」電話の相手はそう答えていた。
　発信番号を割り出し、ついにテロリストの潜伏先を突き止めたと確信した矢先、
思いがけない事態が発生した。彼らが連絡していた電話番号はモスクワのFSB本部で
あることが判明したのだ。テロリストたちは本部の指示を守って、事件の翌日一人が
モスクワへ出発し犯行に用いた車を持ち去ることに成功していた。乗り捨てられた車は
リャザンとモスクワの中間地点、コロナムにあった。車は盗難車でナンバーに偽装が
ほどこされていた。この点も目撃情報と一致していた。残る二人のテロリストは
リャザン市内で待機していた。このままでは逮捕は時間の問題だと判断したFSB本部は、
事態を取り繕うため、9月24日、あれは「演習」だった発表した。真っ赤な嘘だった。
　爆弾を仕掛けたテロリストはFSB職員で、計画実行時、彼らはリャザンに滞在して
いた。FSBリャザン州管理局がその住所を突き止めたことが文書で二度確認されている。
　パトルシェフは、電話で捜査の進捗状況を聞き、犯人逮捕は間近だと伝えられた。
　その途端、彼は犯人逮捕を禁じ、事件は単なる「演習」にすぎないと言い出した。
　リャザン州FSB管理局長アレクサンドル・セルゲーエフ少将はさぞ面食らったに違い
ない。だがリャザン州FSB管理局は予防措置のためと称してテロリストを逮捕し、その
過程でかなり手荒なこともした。殴打されたテロリストは「偽装証明書」を差し出した。
　その直後、モスクワ中央本部の将校が文書を持って現れ、彼らの身柄は釈放された。
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　連続アパート爆破事件は、リャザンでのしくじりで、奇しくも全貌が現れた。