2020.8.22
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匸P　　コーヒーブレイク　

　　　目に見えぬ侵略　　中国のオーストラリア支配計画
　　　　SILENT INVASION,2018　　 CHINAS INFLUENCE IN AUSTRALIA

　　　Clive Hamilton著 山岡鉄秀監訳　奥山真司訳　飛鳥新社　2020.06.05
　　　クライブ・ハミルトン
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　2005年6月、在シドニー中国領事館の政務一等書記官・陳用林(チンヨウリン)が
オーストラリアに政治亡命した。彼はオーストラリアが西側諸国の中の弱い鎖と
みなされ、中国共産党が決定した戦略計画や活動手段を体系的にテストする場に
なっていることを率直に語った。当時は誰も信じ難いことだったが、15年経った今、
遅すぎた感はあるが、彼の話が誇張ではなかったことが分かり始めた。
　オーストラリア人が反中国の発言をすると「外国人恐怖症」「人種差別」と非難
される。一方、親中国派は、甘い投資や、招待旅行、過剰な賞賛、ハニートラップで、
中国政府に籠絡されて(パンダ・ハガー)になり、表面的には人権派と思わせる巧妙な
言い回しで人民解放軍の意思を代弁する。彼らの影響で、オーストラリアの人々は
アメリカを離れ、中国に接近する方が、自国の将来は良くなると思った。
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【愛国教育運動】
　中国共産党は1980年代に三つの思想危機に直面した。
　社会主義思想、マルクス主義、そして党への信頼の危機だ。
　1976年に毛沢東が死んで、大躍進(1958-62)と文化大革命(1965-75)の真実が知れ
渡ると、民主化運動は急激に進み、1989年6月4日のデモで頂点に達した。
　共産主義ソ連が崩壊に向かい、絶望的な危機にあった中国共産党は、自分たちに
人民を支配する権利があることを、どう納得させるかに腐心した。
　江沢民は、新しいイデオロギーで現代史の過去を消し去る方針を立てた。
　筆者は、ワン・ジョン著「中国の歴史認識はどう作られたのか」(東洋経済新報社，
2014）を引用し、歴史を改ざんすることで、中華民族の新たなイデオロギーが、
「物語(ナラティブ)｣として急速に打ち立てられた足跡を暴いている。
　1991年8月に開始された「愛国教育運動」の基本的なメッセージはシンプルだった。
《「中国は外国列強の手によって百年の屈辱を受けた。19世紀半ばのアヘン戦争から
百年間にわたり、中国は外国人によって脅され、屈辱を受けた」
　封建的な支配者は腐敗していたが、多くの勇気ある中国人たちは国を守るために
命を投げ出した。中国共産党は帝国主義者との戦いを先導し、1949年には民族を解放
して中華人民を脅すことはできないことを証明してみせた。そして共産党が、過去の
偉大な国家－2500年続いた世界で最も偉大な文明－の栄光の復活への道をつけた。》
　子供達は、マルクス主義教育より、漢民族による栄光の復活「物語」を好んだ。
　作られた物語で育った子供たちは、現在35才以下の世代になる。この世代は、
17歳頃、北京オリンピックで祖国の偉大さを肌で感じた。これからは中国が西洋の
屈辱を跳ね返し、自分たちが世界を侵略する番だと思ったに違いない。
　2008年の北京オリンピックを仕切ったのが習近平であった。そしてこの時、独占
放送権を得たのが習近平と親しいオーストラリアのメディアであった。
　新世代は、チベット、台湾、ウィグルは、ずっと昔から中国の領土で、南シナ海の
島々も昔から中国の領海だと信じている。
　私達は日中戦争を戦ったのは蒋介石の中華民国であり、最終的に日本に勝った
のは連合国であることを知っている。だが、中国の若者は全て毛沢東の人民解放軍が
成し遂げたと教えられている。少し考えれば矛盾に気づくが幼児期には分からない。
　1945年に日本軍が去ったあと、1949年に毛沢東がライバル蒋介石を台湾海峡に押し
出して中華人民共和国は始まった。この事実を消去した歴史教育を受けた若い世代は、
チャーチル、ルーズベルト、スターリンが密談した（蒋介石さえ参加していない）
ヤルタ会談に、毛沢東が参加したと思い違いをするらしい。
　中国共産党が「外国勢力による脅しと屈辱に対する戦い」というストーリーを
語り始めたことで、中国現代史は書き換えら過去の歴史も消し去られた。
　「中国近代史は屈辱の歴史」、「国家の偉大なる復興」こそ核心的価値という
教育は、急速に若者を外向きの反西洋民族主義にしてしまう。
　中国の報道官は都合が悪い事に対して、国際法は紙クズだと断言する。それを
真に受け、西洋が間違いで報道官の発言が正しいと納得する大衆が育った。
　環球時報は「国への愛と党への愛は現代中国では同じことだ」と主張する。
　劉暁波は、この愛国主義の強要、中国共産党が国民のプライドを利用しようとする
行為を拒否したため、党によって完全に封じ込められた。
　中国による愛国主義の強要は国内に留まらない。世界に散らばる500万人もの華僑に
対しても、中国愛を強要する。
　海外の中国系の人々が尊ぶ「自由、民主主義、平等な人権」という、西洋によって
発明された重要な概念を、「中国の価値体系」に取り替えることを求める。
　カネや脅しに負けた人は、臆面も無く中国共産党のスポークスマンに変身する。
　中国は、どこまで地球上の領土を回復すればピークに達したと感じるのだろうか。
　南シナ海の領有権で、中国は、2000年以上前に南シナ海を発見し、名称をつけ、
探査し、利用したと言い張る。中華人民共和国は1949年建国だ。「九段線」を最初に
記した1947年の地図は、手書きで島の名を書き加えてあるものだ。地図右下に、
右から読む旧字で「図略置位島諸海南」とある。(wikimedia commons）
　また、中国シンパのイギリス人が書いた歴史書「1421中国が新大陸を発見した年」
には、鄭和が世界の主な大陸に停泊し中国人水兵が現地の人と交じわったとあり、
事例の中にニュー・サウス・ウェールズ州のエデンも含まれている。

【愛国心の強要】
　2017年6月、オーストラリアの放送局が「フォーコーナーズ」という番組を放送
した。この番組で世論が変化し始めた。オーストラリア社会に浸透する中国の影響、
政治家が中国の巨額資金で踊らされている実態が暴かれ、その反響は大きかった。
　年末になると、国民の間でも中国の影響工作が注目されるようになった。
　100万人もいる中国系オーストラリア人に対して、筆者は、知り合いの人々に
中国共産党に対する意識をインタビューしてみることにした。
　始めに返ってきた返事は「中国系」とはどういう意味だ？であった。
　香港、シンガポール、マレーシアから来た人は含まれるのか、またチベット人は
中国人に含まれるのか？とも聞かれた。
　そこで筆者は中国本土で生まれた漢民族に絞って聞きなおすことにした。
　ある人の話しでは、20%～30%の人は親中的な感情を持ち、40%～50%の人は中立、
残りの20%～30%はオーストラリアに忠誠心を持っているが積極的には発言しないとの
ことであった。報復を恐れているからだ。
　そしてほぼ全員が南シナ海における中国の領有権の主張を支持し、チベットも、
台湾も、中国のものであると信じているといった反応であった。
　オーストラリアでは政治献金が規制されていない。そのため中国系の大富豪が、
寄付金で、政治家や大学、メディアを味方に引き入れ、大学の研究所を乗っ取れた。
　そして簡単に「中国の友人」に仕立てあげることがてきた。
　西洋諸国でオーストラリアがもっもと脆弱な国だということを、中国は良く知って
いるのだ。もはや手遅れなまでに浸食されたと見る識者もいた。
　日本と比べてオーストラリアの華僑の数は規模が違う。オーストラリアには
中国移民が100万人もおり、中国共産党の親派と、オーストラリアに忠誠心を持つ
移民がそれぞれいて、コミュニティーも一様ではない。文化大革命を逃れてきた
移住者もいる。天安門事件の直後に、留学中の若者5万人をオーストラリアに留めた
ことで定住権を得たものもいる。中国共産党はそんな事情にお構いなく、一律に
中国への愛国心を要求している。

【国家安全法】
　中国共産党は、2020年5月、国家安全法を香港に適用した。9月予定の香港立法会議
選挙も1年延期した。8月にはアップル・デイリー紙の犂智英(ジミ－・ライ）や、
周庭さんらを逮捕して香港市民に恐怖を植え付けた。
　書店から関係書物を排除し、ありとあらゆる形で言論の自由を封殺している。
　こうした中国の露骨な動きは、アメリカだけでなく、イギリスまでを怒らせ、
ファーウェイやハイクビジョンなど中国スパイ網形成企業との取引を停止した。
　中国電子科技集団が進めている「スマートシティ」計画は、恐ろしいものだ。
　犯罪予知認識ソフトウェアが開発され、ある人物がテロ活動を行う可能性があるか
どうかを予測するため、雇用履歴や銀行口座歴、消費習慣、友人の情報、そして
監視カメラによって記録された動きなどのデータを使うシステムを試用運用している。
　しかも2017年に成立した中国国内の「国家安全法」により、政府は自らが必要と
みなしたあらゆる個人のデータにアクセスできる法的な権利を得ている。
　中国系企業のサーバーにあるデータなら、政府による情報提供要求により、堂々と
表玄関から抜き取ることができる。電力会社のインフラが中国系企業に買い取られて
おり、すでに危機にさらされている。
　ファーウェイの危険性は、すでに良く知られているが、監視カメラで世界最大の
企業となったハイクビジョンも要注意だ。霧の中でも車のナンバープレートを認識
することができ、高度な顔認証テクノロジーを使って特定個人を追跡することも
可能だという。2017年3月、専門家たちはハイクビジョンが自社の監視カメラに
「管理者権限レベルのフルアクセス」を許す「バックドア」を仕込んでいたことを
突き止めた。2017年5月、アメリカの国土安全保障省は、ハイクビジョンによる情報
アクセスの危険性を警告した。
　アメリカ経済における知的財産の窃盗被害は、年間6000億ドルに及び、その最大の
容疑者は中国だ。軍事技術から宇宙開発まで、知りたい情報を探索してくる。
　オーストラリアのコーダン社は、高度な金属探知機を製造して世界中に販売して
いたが、2013年から14年にかけて、突然売上が止まった。後に判明したのは、中国で
廉価版のコピーが作られ、アフリカで大量に売られていたことだった。
　原因は、コーダン社のある幹部が2012年に中国を訪問し、ホテルのwifiにログイン
してバソコンを使ったことにあった。その幹部がハッキングされマルウェアに感染
したパソコンを本社に持ち帰り、本社システムに接続したことで、金属探知機の
設計図が盗まれたということだった。

　オーストラリアの中国語メディアは、中国領事館を通じた強い圧力(買収や閉鎖
措置)に屈してしまった。中国語の新聞社で唯一残っているのが「大紀元」だ。
　彼らは頻繁にサイバー攻撃を受け、2010年にはブリスベンのオフィスが車から
銃撃された。中国共産党支持者の犯行と言われている。
　中国語のラジオ放送局は全滅した。メルボルンに本拠を置くメディアグループ
CAMG(中国国際放送傘下)が、全ラジオ局を支配し統制しているからだ。
　香港で1993年から2001年まで政務司司長を勤めた陳方安生は、当初北京が
英国との「一国二制度」を尊重してくれるはずだと自信をもっていたという。
　しかし彼女は、筆者にインタビューされた時、自分が愚かだったと、中国の手口を
次のように語った。NGOをカネで買収し動かすやり方、反対派の声を抑圧するやり方、
大学の理事会に親中派を送り込む方法、党派的な協会を設立するやり方、そして
メディアをコントロールし、ビジネスに圧力をかけるやり方などだ。
　2015年、香港の書店の5人が拉致された。それ以後、彼女はもう本土を訪れない。
　拉致されるリスクがあるからだ。
　中国国家安全部はオーストラリアに職員を送り込み、捜査中の容疑者を脅した。
　また外国籍の人を誘拐し中国国内の秘密刑務所に収容することもしている。
　2014年、16年に台湾の民主運動家たちは「白狼」という犯罪者集団に襲われた。
　オーストラリアでは中国との犯罪者引き渡し条約が、批准される寸前、2017年に
否決された。アメリカは香港との間で結ばれた同条約も停止した。

【大規模な資金】
　中国から大規模な資本流出を受けている影響も大きい。
　KPMGの調査では2007年からの累計でオーストラリアはアメリカに次ぐ第二位で
900億ドルもある。アメリカへの中国資本流出は1000億ドル。経済規模がアメリカの
13分の1でしかないオーストラリアでこの額は異常だ。
　経済面で抜き差しならない処に追い詰め、言うことを聞かせるやり方は、すでに
東南アジアの貧しい国、アフリカ諸国で実現された手口だ。明日のオーストラリア、
ニュージーランドがこれらの国と同じ運命に陥るリスクは高い。
　中国警戒が足りなかった2015年、北西部のダーウィン港が、98年間の租借権で
中国企業に売却された。インド洋に向かう一帯一路の重要拠点であり、スリランカ、
ジブチ、ギリシャにつながる。将来は軍港にされる恐れもある。
　2017年5月には、シドニー西部で進めている新国際空港が中国に狙われた。
　中国はカンボジア、ミャンマー、アフリカのナミビア、アンゴラなどを支配し、
オーストラリアも支配下に入れてしまう腹づもりであった。
　幸いにしてオーストラリアは、2017年3月、李克強首相が訪問中、北部インフラ
施設と一帯一路をつなげる覚書に合意しないことを表明し、彼に恥をかかせた。
　オーストラリアにおける中国系オーストラリア人は、いわば情報戦で国際的な
踏み台にされていた。筆者らが背後関係を調べ、正体を暴いた著名人達の実名と
写真が載っているが、政界、財界の要人が、中国共産党親派であった。正確には
親派どころか在シドニー中国領事館に派遣された中国共産党員そのもの、および
その代弁者であった。
　歴代首相、外務大臣達も中立的立場を装い親中発言をしていた。彼らの発言は
信用され影響は絶大だった。だが2018年、本書の出版で正体がバレてしまった。
　2008年の北京オリンピックの頃から最近まで、彼らの中国寄り発言によって、
オーストラリアが受けた侵略の被害実態が、幾つも紹介されている。
　黒いカネの出し手だった、黄向墨(ホアン・ジャンモ）や、周澤栄(チャン・
チャックウィン）と繋がっていた要人は数多い。6000万ドルも蓄財した要人もいた。

【北京の南極計画】
　第11章・文化戦争、北京の南極計画(343頁)に、オーストラリアならではの
とても新鮮で重要な情報があった。
　中国はすでに南極基地を５カ所も建設し、しかもオーストラリアが領有権を主張
する地域に集中して建設している。
　南極に最も近いタスマニア島の先端に、ホバートという町がある。中国はこの町に、
南極大陸進出の兵站を建設している。
　2016年、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)は、中国と共同で、この
ホバートに南半球の海洋研究センターを立ち上げた。中国が200万ドルを拠出する
予定だという。アデレード大学、シドニー工科大学の教員たちはこれを歓迎して
いる。だが、北京の意図にあまりにも鈍感過ぎると筆者は次のように警告する。
　《共産党政権は国内の自然環境の破壊を許し、国際法に対し冷淡な態度をとって、
都合が悪くなった時は無視する。たとえば国際仲裁裁判所が中国の南シナ海の島々の
領土編入を不法とする判断を下した際には、国連海洋基本条約さえ非難している。
　そしてこの判決について「紙クズでしかない」と否決したのだ。香港の政治の
自律性を保障した香港基本法も破ったし、資源採掘のための調査を禁止した1991年の
「環境保護に関する南極条約議定書」も、すでに無視している。》
　中国は海洋研究に名を借り、間違いなく南極大陸を軍事基地化する腹づもりだ。
　アン=マリー・ブレイディの報告によると、中国が資源採掘する準備をしている
ことが中国メディアの情報からうかがえるという。
　過去10～15年の間に、北京政府は南極に基地を建設し、滑走路を敷き、その目的に
かなった船を調達している。そして中国版GPS「北斗衛星導航系統」のナビシステム
基地を建設中で、ミサイル攻撃の正確性を確保しようとしているというのだ。
　中華人民共和国は、1959年に批准された南極条約に加盟しており、2017年5月には
南極条約協議国会議の主催国にもなっている。南極の資源開発は国際的に禁止されて
いることは彼らも百も承知のはずだが、習近平はずっと先を見据えているようだ。
　習近平はホバートを訪問した時「中国はオーストラリアをはじめとする国々と、
南極についての理解を深め、保護し、開発する」と、うっかり本音をもらした。
　中国極地研究所の内部文書には、五番目となる中国の新しい「南極基地の最大の
任務は資源開発と気候変動研究」にあるとはっきり書かれていた。
　香港安全維持法で中国と英語圏諸国との間には、決定的な亀裂が生じた。
　日本もアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアと歩調を合わせ、中国への
監視を強める方針を表明した。長いお付き合いの国だけに政府は慎重だが、経済の
魅力に負けて「自由、民主主義、平等な人権」の価値を譲ってはならない。
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　中国の侵略意図が、香港国家安全法の制定で世界中に知れわたった。


（参考）
　本書は全部で13章、2段組で380ぺージ。
　現地オーストラリアでは周知のことも、日本では知られていない話題も多く、地名、
政界、華僑実業家、中国領事館、中国共産党の要人名が多数登場し、途中でこれらを
整理しながら読み進む必要があり、読み通すにはやや努力を要する。
　本文脚注は巻末40ページに及び、英文で本文の出典・引用文献をあげている。
　脚注数は、実名での告発記事が多い章では、論拠の脚注もそれだけ多くなる。
　次の脚注数から筆者の誠実な取材態度が実感できる。
　第1章　オーストラリアを赤く染める　本文　12頁　脚注　2
　第2章　中国は世界における自国の立場をどう見ているのか　本文　19頁　脚注　57　
　第3章　僑務と華僑　　　　　　　　　本文　38頁　脚注　128
　第4章　黒いカネ　　　　　　　　　　本文　49頁　脚注　193
　第5章　北京ボブ　　　　　　　　　　本文　21頁　脚注　86
　第6章　貿易、投資、統制　　　　　　本文　29頁　脚注　104
　第8章　新旧のスパイ　　　　　　　　本文　35頁　脚注　132
　第9章　悪意あるインサイダー　　　　本文　27頁　脚注　90
　第10章　オーストラリアの大学で｢魂に工作する｣　本文　44頁　脚注　178
　第11章　文化闘争　　　　　　　　　　本文　32頁　脚注　98　
　第12章　中国の友人:親中派　　　　　本文　26頁　脚注　59
　第13章「自由の価値」　　　　　　　　本文　8頁　脚注　4
　最終章に、香港大学のフランク・ディコッター教授が、中国共産党の本質を
簡潔に語ったEメールがある。教授は、中国共産党をマフィアのボスになぞらえ
ドン・コルレオーネは容赦なく敵を倒す。そんな相手とボーイスカウトの少年が
取引をしているようなものだと警告する。
《三つのことが重要だ。第一に、中国共産党は構造的にレーニン式の一党独裁国家の
ままであること。第二に他のレーニン式の一党独裁国家と同様に、国内外で自分たち
に反対している全てのものに対処するための組織と哲学(プロパガンダ)の両方を
持っている。それが中央統一戦線部だ。第三にレーニン式の一党独裁国家は常に
公約(別の言葉では「ウソ」だ)を掲げるのだが、それは都合が悪くなったら常に
破棄される。これはつまり、彼らの主張することはほとんど真剣にとる必要がないと
いうことだ。
　この三つに、さらに一つの要素を加えておくべきだろう。それは容赦がないと
いうことだ。国内外のあらゆるすべての反対勢力に対して、容赦なく弱体化させ
ようとしてくる。実際のところ、中国共産党にとって、中国国民には「外国」という
ものは存在しない。これらすべてはリベラルな民主主義国家にとってはあまりにも
相入れないものであり、中国人以外の人々には理解できないものだ。これはまるで、
一人のボーイスカウトの少年がドン・コルレオーネと取引をするようなものだ。》