2020.2.6
ξ
匸P　　コーヒーブレイク　

　　　ザ・コールデスト・ウィンター　朝鮮戦争(上)
　　　　THE COLDEST WINTER,2009
　　　　　　　America and the Korean War 　

　　　　David Halberstam著 山田耕介・山田侑平訳　　文藝春秋　2009.10.15
　　　　デイヴィッド・ハルバースタム
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　朝鮮戦争開戦直後の最初の驚きは、いかに北朝鮮軍が強く、いかに韓国軍が弱いかと
いうことだった。日本駐留米軍も太平洋戦争勝利の宴に酔って、ふぬけになっていた。
　マッカーサーの側近、アーモンド少将が立案したブルーハート作戦は実行不可能、
先陣に投入された第24師団は、当時日本にいた4個師団中、最低のレベルだった。
　１連隊は訓練中で2個連隊しか出せず、その連隊も深刻な定員割れで、2個大隊編成。
　動員された兵士は、日本で大切にされ、甘やかされ、車に頼り切り、足で歩くことを
忘れていた。新兵は訓練不足で銃を撃つことすらできないありさまだった。
　東京の司令部は前兆を見過ごし、1948年9月に着任したウォーカーは、1950年6月、
いきなり窮地に陥った。しかし彼は半島に踏みとどまり、高齢の佐官、実戦経験のない
弱小兵を率い、壮絶な戦闘に耐え抜いた。忘れられた勇士の物語は切ない。
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　　2020年1月27日は、アウシュビッツ強制収容所がソヴィエト軍により解放された日から
75年の節目にあたり、厳粛な式典が開かれていた。
　一方、多大な戦争被害者を出した朝鮮戦争は国際的知名度が低く、どんな戦いで
あったかさえ忘れられている。その戦争は今も休戦状態のままだ。
　本書は、デイヴィッド・ハルバースタム(1934-2007)の死後、2年目に発刊された。
　NYタイムズ記者だった彼が生涯の最後に残した、渾身のノンフィクション作品だ。
　第二次世界大戦の終結後、世界は、共産主義圏と資本主義圏に分かれ、冷戦に入った。
　朝鮮戦争は両陣営がまともにぶつかり、殺し合った、最後の地上戦であった。
　首脳同士の強烈なエゴがぶつかり、過った判断で多くの兵士や民衆が犠牲になった。
　長い冷戦期、だまし合いと戦闘の実像は秘史とされていたが、50年を経てようやく、
当時のソ連の資料が公開され、戦争の実態が明らかになった。それらを調査し、多くの
証言を集め、空前絶後の仕事を成し遂げ、ハルバースタムは逝った。
　筆者はとりわけ首脳陣に厳しく、義憤に満ち、歴史上の偉人であっても容赦しない。
　ルーズベルト、蒋介石、金日成、中でもマッカーサーには手厳しい。

　戦前戦中、アメリカで醸成されたおおいなる誤解があった。
　ルーズベルトに愛された蒋夫妻はクリスチャンだった。そこから中国人は優しく
愛すべき人ばかりで、日本人は憎悪すべき野蛮人というイメージが生まれた。
　間違ったイメージを拡散したのは、キリスト教宣教師たちだった。
　彼らは中国に幻想を抱き、普通の農民がキリスト教徒になるのを望んでいるとされ、
異教徒の過去を裁ち切り立ち上がろうとしている国だと信じた。
　ルーズベルトは中国びいきで、ラジオ放送を通じ、親しげな優しい声で、中国への
支援を国民に語りかけた。宋子文、孔祥熙らチャイナロビーが政権を囲い込んでいた。
　だが中国大陸で実際に進んでいた布教の現実はまったく違っていた。
　貧しい農民は毛を支持し、毛の共産主義に賛同し、蒋介石の腐敗に憤っていた。
　アメリカは、蒋介石軍を支援し、戦費と武器を投入し続けたが、その戦費の40%は、
蒋介石と国府軍の懐に入り浪費された。国府軍は人民軍との戦いに負けつつげ、負ける
たびに大量の武器を残して戦場から逃亡した。米軍の最新兵器は人民軍の手に渡り、
さらに強力になる。毛は国府軍を自分たちの兵站だと揶揄していた。その実態を見た
アメリカの将軍たちは、口を揃えて蒋介石を批判した。だが米国民は、蒋介石が台湾に
逃げ込むまで、こんな中国大陸の実情を知らされなかった。
　この傾向と過ちは後のベトナム戦争でも繰り返される。
　クリスチャンの李承晩を朝鮮半島に連れて来たことも大失策だった。
　他に適任者がいなかったため、いやも応もなかった。
　若い頃にアメリカに亡命し70歳になった李は、情熱的で自分本位、共産主義が嫌いで
民主主義者だが、気分屋で、自分の意思に歯向かうことは誰にも許さなかった。
　こんな李をマッカーサーに強く推したのは、やはりクリスチャンの蒋介石だった。
　最初に着任したホッジ将軍は、大統領になった李を軽蔑し「よこしまで情緒不安定、
冷酷で腐敗し、度し難たいお天気屋」だと批判し、何とかしてくれと何度も訴えた。

　戦後日本にいたアメリカ軍の兵士は、早く復員したい一心で帰国を急いだ。
　司令部は兵力を補充することなく、お殿様のように祭り上げられて遊びほうけていた。
　アメリカ国内では、共和党が、ニューディールで共産化した民主党を攻撃し、次期
政権を狙い、アイゼンハワーを共和党に取り込もうとしていた。
　民主党政権は、1932年に当選したルーズベルトから、トルーマンに引き継がれ、20年
続く長期政権だった。東京のマッカーサーは次期大統領を望み、政権と対立していた。
　マッカーサー周辺には、お追従者がはびこり、アーモンド参謀長が障壁になり司令官の
ように振る舞っていた。王様の気分を害する情報は報告せず、正論を述べる客人は拒絶
した。ウィロビー准将は、正確な現場の情勢報告に最低点をつけて突き返した。
　東京の司令部は、アジア人を見下し、油断し、スキだらけだった。38度線に不穏な
動きがあると本国が警戒信号を送っても、簡単に蹴散らせると自信を持って主張した。
　朝鮮戦争は1950年6月24日深夜に始まり、米軍は、7月、8月と、北朝鮮軍に押しまく
られ、半島の南端、洛東江の内側、釜山近郊まで後退させられた。韓国軍はまったく
役に立たず、すぐに逃亡した。両翼に韓国軍が配置されるのを米軍兵士はすごく嫌った。
　38度線を突破した北の軍は、長く伸びた防衛戦に、まばらに分散配置された米軍を
すり抜けて行った。ザルのようなもので、部隊と部隊の間は何キロも空いていた。
　夜間に隙間を抜けた北朝鮮の大軍が、米軍の両翼を挟み撃ちにした。孤立した部隊の
悲惨な全滅があちこちで起こった。米軍は隣の隊との連絡が取れず、友軍か敵軍かも
分からないまま、いきなり攻撃されて壊滅するといった戦闘が続いた。
　北朝鮮軍は厳しく鍛えられ、軍紀は厳正で士気は盛んだった。偽装がきわめて巧みで
アメリカ兵とは違い、道路は避けて峻険な地勢をたびたび徒歩で移動した。
　逃げてきた南朝鮮の農民を偽装し、少人数で先行させ、米軍陣地を偵察させて、驚く
ほど正確に砲火を浴びせた。ソ連が彼らに提供したT-34戦車の鋼鉄板は厚く、迫撃砲が
命中してもびくともしなかった。米軍は総崩れとなり南に撤退するしかなかった。
　7月初旬、ウォーカーは解任すべきだと東京が騒いでいる頃、現場はそれどころでは
なかった。米軍はなだれを打つように洛東江(ナクトンガン）まで押され続けていた。
　釜山をどう守るか。洛東江に視察に来たリッジウェイとウォーカー、ふたりの将軍が
話し合った。リッジウェイは、これ以上後退せざるを得なくなったらどうするかと
ウォーカーに質問した。ウォーカーは「これ以上は後退しない」と答えた。
　リッジウェイが、貴官が兵隊に伝えることを聞いているんじゃない、貴官はどうする
おつもりなのかを聞いているのだと迫ると、「洛東江防衛線は絶対に破らせません、
将軍」と挑戦的に答えた。ウォーカーは専用機で戦場を飛び回り、身を乗り出して、
拡声器から、逃げるな、戦えと兵を鼓舞した。最前線に降りて師団長にカツを入れた。
　しかしウォーカーには欲しい佐官が得られなかった。東京に帰ったリッジウェイが、
現地の参謀の質が悪いことをアーモンド参謀長に進言した。しかし輸送船が横浜に着く
たびに、士官の記録審査が行われ、最優秀士官はマッカーサー司令部が掠め取り、
残りが現地に下げ渡された。人材を間違った場所に送る東京の腐ったパイプラインが
ウォーカーをさらに窮地に追い詰めた。
　適任といえる連隊長は37歳のひとりだけ、残りは55歳、50歳、49歳が4人、47歳が2人
だった。それでもウォーカーはエゴを完璧に押し殺し、欲求不満を胸に収めた。
　配られた持ち札と戦場をそのまま受け入れ、文句は言わなかった。
　8月、大邱市で、ウォーカーの第八軍が釜山橋頭堡攻防戦の最後の準備をしていた頃、
彼の専属パイロットだったマイク・リンチに語った次のことばがある。
　「きみと私は兵士らと大邱に踏み留まって最後まで戦うことになるかもしれない。
仮に敵がこの街の守りを破ったとしても、きみは私とここに残る。われわれは最後の
瞬間までここに踏み留まるのだ。」
　9月1日深夜、洛東江・釜山防衛橋頭堡で、最後の猛攻が始まった。
　死闘を制し、釜山を救ったのは、ワシントンでもマッカーサー司令部でもなかった。
　大きく戦況を反転させたのは、ひとりの中尉・リー・ビーラーの判断にあった。
　戦場では実戦経験が何より物を言う。彼は、ドッグ戦闘工兵中隊の隊長だったが、
上官のヒル大佐が、河原のひらけた平地に防衛線を構築しようとしたことに猛反対した。
　大佐は杓子定規に洛東江から一歩も退くなと主張したが、彼は承知しなかった。
　こんな見通しの良い平地に陣地を築けだと。みんなが殺されるのを待つ気か。
　ビーラーは、工兵を後退させ、霊山(ヨンサン)の丘に防衛陣地を築かせた。
　彼が選んだ場所は、敵を挟み撃ちにして攻撃できる最適の地であった。
　岡の上で穴を堀らされ、文句たらたらだった兵士は、初めて敵襲を受けた夜、穴を
深く掘り直せと叱った軍曹のケツにキッスしたくなったぜと回想している。
　軍法会議だと？　戦いのあと、ヒル大佐の訴えは、にべもなく却下された。
　深夜の波状攻撃は3度、4度と続いた。押し寄せる敵を徹夜で防ぐアメリカ軍兵士は、
へとへとになった。そんな霊山の戦闘は5夜連続し、寝る暇も、休む場所もなかった。
　東京の援軍到着は遅く、ようやく来た海兵隊は、あろうことか、すぐにこの陣地から
引き抜かれた。フレッシュな精鋭を抜き取ったのは東京のアーモンド参謀長だった。
　マッカーサーの仁川(インチョン)上陸作戦に焦点をあてた冷酷な移動命令であった。
　米兵の疲れは溜まる一方だった。毎夜、戦友を失った。
　北朝鮮の猛攻に耐える夜、気の抜けない昼、その繰り返しが2週間続いた。
　9月20日、敵は潮が引くようにいなくなった。
　戦闘の5日目にビーラーは蚊に刺されて日本脳炎を発症し、日本の病院に収容された。
　体重は40キロに落ちていた。病院でまだ回復途上にあった3カ月後、ピーラーは朝鮮
半島北方の戦場で、自分のいた第二工兵大隊の多数の友人が、戦死または行方不明に
なったとの報に衝撃を受けた。蚊に刺されていなければ、きっと自分も死んでいた。
　喉元過ぎれば熱さ忘れるというが、北朝鮮軍が去ると、死闘に耐えた兵士も司令官も
忘れられた。誰にも賞賛されず、歴史からも消え去った。

　38度線を越え、南進を強く希望した発案者は北朝鮮の金日成だった。
　モスクワの公文書が近年公開され、南への侵攻の推進力は自信過剰な若造の金日成で
用心深いスターリンはいくらかしぶしぶ同調していたことが、はっきりした。
　1949年10月、毛沢東が国共内戦に勝利した。金は自分も南朝鮮人民を解放したいと
熱望し、再三に渡ってスターリンに南進の許可を求めた。
　南から北へ逃亡した朴憲永は、金日成とスターリンに合いに行った際、南の人民は
すべて李承晩が嫌いで、北が南進すれば30万人の同士が諸手をあげて我が方に味方すると
スターリンに語った。(※休戦後、この発言で朴憲永は密かに連れ出され処刑された）
　スターリンは反対はしなかったが、金をおだてるだけで消極的態度をとり続けた。
　1950年1月12日、国務長官のディーン・アチソンが、間の悪いことに、演説の中で、
朝鮮はアメリカの防衛ラインには入らないとも読み取れる間違ったメッセージを出して
しまった。これを聞いたモスクワは、アメリカは朝鮮の紛争に介入しないと解釈した。
　スターリンは、金からの南進依頼を断り、ソ連は手を出さないと言いながら、中国が
手を貸してくれるかもしれないと金に助言した。
　新生中国は、スターリンに恩義があり、毛沢東にかなりの影響力を持っていることを
彼は自覚していた。台湾に軍事行動を起こすには、どうしてもソ連の支援が必要になる。
　アメリカは台湾海峡に第七艦隊を送り込み、国府軍を守っている。海と空の戦いでは
毛に勝ち目はない。だが陸地づたいなら大量の兵を動員できる。朝鮮半島で30万人の
兵士が死のうと、毛は痛痒を感じない人物であることをスターリンは知っていた。
　米軍を朝鮮半島から追い払えば、台湾攻略が近づくと毛は考えるに違いない。
　毛と金の会談前に、スターリンは金に南進許可を与えたと、毛に電報で通知した。
　5月13日、スターリンの後ろ楯を得た金は、虎の威を借るキツネのように厚かましい
態度で毛と面会した。毛は金に中国の軍事支援を約束し、アメリカが介入した場合、
中国が朝鮮との国境に派兵するのを希望するかと質問した。
　高飛車な態度で毛に接する金は、その必要はないときっぱり言い放った。
　毛が提案した「速戦即決」についても、自分の発案のように駐中国ソ連大使に吹聴し、
自分と毛とはきたるべき攻撃で完全な一致をみたと語った。
　毛の目の前で、けちな軍功しかない金日成が、戦略を代弁する。いらいらした毛は
「横柄だったよ」と後に語っている。
　金は1945年9月19日に密やかに帰還した時、ソ連の少佐の軍服をまとっていた。
　この時期、北朝鮮はソ連の衛星国のようなものだった。
　1945年10月中旬の大集会で、始めて金が演説した時、伝説の英雄の帰国に期待して
集まった大衆は失望した。(※第4章「でっちあげられた抗日の英雄」)
　《金はそっくりロシア人が用意したことばで一本調子に語った。しかも、群衆の耳
に届いたのは"単調であひるのような声"の若い、言語不明瞭な政治家の演説だった。
　ある目撃者によると、金の服は寸足らずで、髪型は"中国人のウェイター"に酷似して
いた。だが群衆の多くをひどく困惑させたのは、スターリンとソ連へのお追従だった。
　すべての賛辞は「無敵の驚くべき軍隊」赤軍に捧げられた。群衆は自由という明快な
朝鮮語を期待して集まっている。だが、かれの発言が映し出したのは新手の政治的服従
だった。単調な繰り返しのあまりの多さに人々はうんざりしてしまった。》
　1948年に出版された伝記で、早くも個人崇拝は強化され、抗日ゲリラ指導者全員の
格上に金を持ち上げた。1950年にはすべての権力機関を計画的に支配下に収めた。
　（※金日成の神話は、2012発刊、筑摩書房、金賛汀著「北朝鮮建国神話の崩壊－
金日成と『特別狙撃旅団』」に詳しい）
　作戦決行の6月25日が近づくと、金の最高顧問は全員がロシア人の将軍になり、
次第に戦争計画作成を肩代わりしていった。
　《将軍らは金の当初の侵攻計画をアマチュアあつかいし、計画は彼らの仕様に従って
作り直された。朴憲永の朝鮮労働党政治局と軍内の親中派は、高度な機密部署から
念入りに排除された。国内に運ばれる一部重火器の輸送は鉄道ではなく、海路が
使われた。中国領内の通過を避けるためで、北朝鮮、ソ連とも中国の役割を小さくした
がっているのは見え見えだった。》
　ソ連、北朝鮮、中国、三カ国間の相互信頼は驚くばかりに低かった。
　金は侵攻が始まったことを中国当局に通報さえしなかった。
　金が中国に通報したのは2日後の6月27日だった。南朝鮮が先に攻撃してきたと主張
したが、中国側は大ウソだと知っていた。

　マッカーサーの熱弁に、並み居る将軍たちは幻惑され、仁川上陸作戦が採択された。
　彼は海兵隊を指揮し先頭に立つ自画像に酔っていた。写真を撮る時も斜め下から
撮影するよう指示し、独特のオーラを感じさせる写真にこだわった。
　本来の上陸作戦の最適地は半島の南、群山(クンサン)だった。
　アーリー・キャップス海軍少佐は「自然と地理上のすべての不利な条件をリスト作成
したところ、仁川は全部にあてはまった」という。最悪の地点が選ばれた。
　仁川河口は潮の流れが早い。河口には天然の要塞、月尾島(ウォルミド)がある。
　両岸は絶壁で砂浜はなく、あるのは海岸堤防と埠頭だけ。干潮時は、ぬるぬるの泥の
上を900メートルも歩かねばならない。別の上陸位置だと4000メートルになる。
　満潮と干潮の潮位差は世界でも最大クラスで、9.6メートルもある。
　9月15日は、月に一度しかない最大満潮になる日で、チャンスはこの日しかない。
　マッカーサーは第八軍から掠め取った海兵隊を投入し、その日に作戦を決行した。
　早朝、1度目の満潮時に月尾島を確保、午後5時過ぎの2度目の満潮時、防潮堤にとり
つき上陸はあっけなく成功した。敵は少数で海中には機雷も装備されていなかった。
　数々の幸運に恵まれ、マッカーサーは輝いた。強運としかいいようがない。

　ジョニー・ウォーカーことウォルトン・ウォーカー将軍は、釜山防衛の最大の
功労者だった。しかし、手柄はマッカーサーが独り占めした。マッカーサーは自分の
イエスマン、アーモンド将軍を可愛がり、ウォーカーの上に配置し、トルーマンに
解任されるまで、思い込みで重大な判断ミスを重ねた。ソウル奪還に時間を浪費し、
敗走する北朝鮮兵を逃がし、勝てる戦争を長引かせ、多くの将兵を死地に追いやった。
　毛の軍は緒戦こそ静かに見ていたが、連合軍が38度線を越えて北進し、鴨緑江の
手前まで来た11月1日、待機させた圧倒的大軍を解き放ち、朝鮮半島になだれ込んた。
　判断ミスを重ねたマッカーサーはトルーマン大統領に解任されることになる。
　マイク・リンチは当時を思い出し「ウォ－カーは忘れられた戦争の、忘れられた
指揮官だ」と述懐した。釜山を守り抜いた将軍に再び暗雲が立ちこめる。
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　戦場から、あの兵士の歌が聞こえて来るようだ。♪いつも戦いは辛いものだぜー　



(参考）
◇軍用記号と部隊規模
　XXXX軍、XXX軍団、XX師団、X旅団、Ⅲ連隊、Ⅱ大隊、Ⅰ中隊、･･･小隊
軍　　定員10万人　　　　2個軍団以上で編成。　通常、司令官は大将
軍団　定員3万人以上 　　2個師団以上で編成。　通常、　司令官は中将　　　
師団　定員最大1万5千人　朝鮮戦争では１万2千人のみ。三個連隊編成。師団長は少将　
旅団　定員8千人～1万人程度　　連隊の上、師団の下。
連隊　定員最大4千5百人　3個大隊編成。連隊長は大佐
大隊　定員700人～850人　4個中隊以上で編成　大隊長は中佐
中隊　定員175人～240人　4個小隊編成　中隊長は大尉
小隊　定員45人以上　　　4個分隊編成　小隊長は中尉
分隊　定員10人以上　　　分隊長は二等軍曹

◇地図上の表現(一般兵士用符合、改訂標準　MIL-STD-252B）
　長方形は友軍、菱形は敵軍を表す。
　歩兵は、長方形の角を対角線で結ぶ、×を入れる。
　騎兵は、長方形の右上と左下を結ぶ対角線、／を入れる。
　砲兵は、長方形の中央に小さい黒丸、●を入れる。
　工兵は、長方形の中にEを右に横倒しした、三本柱の鉄棒のような記号を入れる。
　装甲車は、長方形の中に陸上トラックに似た楕円、戦車を上から見た絵を入れる。

◇表記例
　　第三騎兵連隊第八大隊
　　　 _Ⅱ_
　 　３|_／_|８　※（左図長方形の右上と左下を結ぶ対角線、／で騎兵を表す。

　長方形上のⅡは、軍の規模、この例では連隊を表す。
　長方形左の３は、連隊番号を表す。
　長方形右の８は、大隊番号を表す。