この日記は、2003年5月連休前、不注意により右足内果骨折をした日々の記録です。
奇しくも、阪神タイガース歓喜の優勝を、ほぼ全てテレビ応援する幸運を得た日々でもありました。

[骨折日記１]

4月27日(日)午後5時

　昨日板金屋さんが来て修理してくれた二階の小屋根の両脇壁を点検して
みたくなって，ベランダから簡易ハシゴを掛けて昇ってみることにした．
　ずっと以前から大雨が降ると雨水が壁面から浸透してくる問題を根本から
解決してもらうのが工事の目的だった．
　今までも何度か問題箇所にコｰキングをほどこしてもらったが，風のある
雨の日の横なぐりの雨水は完全には防ぎきれない．その原因は小屋根の両
サイド末端処理にあり，しっかり防水するためには，サイドの壁をはつって，
クの字型の板金を入れて水を止めるしか防ぎようがないらしい．
　専門家の意見に従って，壁面の色が多少変色することを了解して工事に
かかってもらった．
　こう書くと簡単なようだが，そこに至るまで，家内は実にねばり強く施工した
工務店と交渉を重ね，原因を突き止めるまで，折衝に当ってくれていた．
　いわば，その苦労の集大成を確認して見ようと思ったのだった．
　屋根にある樋が少し外にでている．それがへこまないように軒下壁面に立て
掛けたハシゴは，やや不安定だった．
　ちょっとハシゴの角度がゆるやかになっていたからだ．
　中間点まで上がった時のたわみ具合で，やや不安を感じ，もう少し上がってから
左手でサイドの樋を掴もうと思った．
　この姿勢変更が，たわみを倍化させたのか，ほんの一瞬の後，ハシゴの足元が
水平に後方へ滑ると同時にふん張る右足を離れパタっと下に落ちてしてしまった．
　空中に残された私は，左手の樋を掴んだが，パンと言う音とともに，プラスチック
製の樋はあっけなく根元から折れてしまった．体が空中に舞った．
　それはほとんど同時に起きたことなのだが，樋が割れるのと，ハシゴが地面に落ちる
のと私の体が落下するのとでバーンと大きな音がした．
　階下の庭にいた家内は交通事故で車が衝突でもしたのかと思ったという．
　
　右足が一瞬で支えを無くし，体が左半回転しながら，落ちた．
　掴んだ左手の樋が割れ，一瞬にしてフっと力が伝わらなく無くなったのが意外
だった．なんでこんなに簡単に割れてしまうんだと，その時思った．
　回転しながら背後の景色が見えたのを覚えている．
　左足は飛びけりでもするように前方を蹴っていた．そのせいでハシゴ自体は
私の体よりも右前に落ちて行ってくれた．
　着地は完璧だったと今でも思う．およそ高度1.5ﾒｰﾄﾙを右足一本だけで地面に
着地した．
　ジーンとする痛みが足首を走った．
　その場でじっとしていたが，それが一分だったか２分だったか，傷みは治まる様子が
なかった．散乱するハシゴと樋を見て，樋を割ってしまった失敗を悔いる気持ちが
強かった．
　患部を指で押して触ってみたら，くるぶしの内側辺がペコペコと動く．
　後で知ったのだが，それが骨折していた箇所だった．
　それが，どれほどおおごとだったのか，その時はまだ分かっていなかった．